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26年度の年金収支は過去最高の黒字に
● 厚生年金は13兆円の黒字
  厚生労働省は8月7日に、平成26年度「厚生年金・国民年金の収支決算の概要」を発表した。時価ベースをみると、会社員などが加入する厚生年金は13兆390億円の黒字で、25年度の5兆7,148億円の黒字から大幅に積み増している。
  一方、自営業者らが加入する国民年金は8,045億円の黒字。こちらも前年度の2,884億円の黒字からさらに伸ばしている。厚生年金の黒字は4年連続、国民年金は6年連続だ。いずれも黒字額は過去最高だ。
  厚生年金の歳入は、前年度より2兆686億円の増加。これは保険料収入が、保険料率の引上げの影響等により1兆2,723億円増加したことが寄与している。一方、歳出では保険給付費が、1人当たり給付費の減少等により5,051億円減少したが、基礎年金勘定への繰入(基礎年金拠出金)が基礎年金拠出金按分率の増加により1兆979億円増加したため、全体では前年度より6,300億円増加している。
  国民年金の歳入は、前年度より4,193億円減少している。25年度は対前年度2,458億円の減少だったことから、歳入減が拡大傾向にあることがわかる。高齢化の影響が如実に現れているといえよう。歳出では、国民年金給付費が、旧国民年金法による受給者数が減少したことにより1,134億円減少したことを受け、全体では前年度より4,340億円の減少となった。
● GPIFによる運用収入は約15兆円達成
  年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による運用収入は、株高が影響して大幅に増えている。厚生年金は時価ベースで14兆2,761億円だった。これは前年度の9兆5,328億円から約4兆7,000億円もの増加。国民年金は9,865億円で、こちらも前年度の6,622億円から約3,000億円増えている。
  GPIFの収益状況を見ると、26年度は収益額15兆2,922億円。収益率12.27%とともに過去最高だった。これは資産構成割合で国内外の株式割合を5割近くまで増やしたことの影響だ。運用資産額の137兆4,769億円も過去最高だが、株価下落や為替差損などのリスクを内包していることに注意したい。25年度のポートフォリオは、国内株式が約16%、外国株式は約16%で、国内債券が過半数を占める運用だった。
  決算結了後の積立金残高(時価ベース)は厚生年金が136兆6,655億円、国民年金が9兆2,666億円で合計145兆9,322億円になった。26年度は厚生年金、国民年金ともに積立金の切り崩しはなく、前年度から13兆8,436億円の積み増しとなった。
参照  : 厚生労働省HP「厚生年金・国民年金の平成26年度収支決算の概要」
  
安藤 啓一 (あんどう・けいいち)
福祉ジャーナリスト。
千葉県出身。大学卒業後、新聞や雑誌記者を経験した後、介護福祉誌の編集長を経てフリーに。パラリンピックや障がい者支援、高齢者介護、医療経営、子育てなどの分野を中心に取材活動をしている。医療、介護と縦割りになりがちな情報を、当事者の目線にこだわり、地域発想、現場重視で「横串」編集することを心がける。鳥取県の「介護ガイドAi」(鳥広マガジン)は、編集を担当。介護テキスト、医療経営誌、介護専門誌などで執筆している。また3人娘の父親として、子育て支援活動にも取り組む。
  
  
2015.08.20
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