>  今週のトピックス >  No.3071
押さえておきたい休職制度の基本的事項
● 休職制度は、就業規則に規定が必要
  近年、仕事や人間関係に悩み、ストレスを抱える人が増加傾向にある。実際、心の不調により休職する人も珍しくない。メンタル不調に関しては企業側が対応に一番苦労している人事労務の問題であり、その中でも休職や復職に関する規定に関しての相談は多い。
  メンタル不調になり欠勤し始めて、一定期間経過すると休職に入るのが一般的であるが、休職のルールに関しては、会社の規模や業種、経営陣の考え方によっても内容は様々である。したがって就業規則に詳細を規定し、実際にいざというときに機能するものにしておかなければならない。本来であれば労使双方がともに自社の休職制度のことを普段からよく理解しておくべきであるが、休職制度の意義について理解していない方も結構多いので、まずは休職制度の基本的な考え方と押さえておきたい基本的事項について解説する。
● 休職制度は、一定期間解雇を猶予するもの
  そもそも「休職」とはどのようなものかと聞かれて、何となくわかっているけど正確に答えられない管理職の方も結構いるようである。いざとなって慌てないためにも休職制度の意義や自分の会社の休職制度の内容はよく理解しておきたい。休職とは、簡単にいうと雇用契約を継続した状態で労働者側の都合で会社を一定期間休むこと。会社側も休むことを承諾し、労働義務を免除している期間である。
  従業員と会社との労働契約は、従業員が労務を提供し、会社はその対価として賃金を支払うことで成り立っており、私傷病が原因とはいえ、労務提供ができないことは、会社が解雇する際の十分な理由となり得る。休職制度は、そうした場合に一定期間解雇を猶予するものとして機能しており、休職期間満了までに復職できなければ退職になるというのが通例である。
  しかしながら、中小企業では就業規則そのものがない会社もあれば、就業規則があっても休職制度を設けていない会社もある。従業員への配慮だけでなく、一方的に解雇をしないことで労務トラブルを避けることができるという意味でも休職制度は設けるメリットがあるといえる。
● 社会保険料の徴収と傷病手当金の手続きを忘れずに
  休職制度は、本人が休職することを申請すれば休職できるわけではなく、就業規則に記載されている要件に該当している際に、会社が業務命令として本人に通知することにより実施されることになるが、中には会社と従業員本人との合意により実施される場合もある。
  休職にはさまざまな種類があるが、主なところとして私傷病休職、事故休職、出向休職、起訴休職、自己都合休職などがあるが、圧倒的に多いのが私傷病休職である。
  私傷病で休職している期間中は、労働は免除されているので、従業員には治療に専念してもらい、会社に対して一定期間ごとに体調面などの状況報告と診断書の提出をしてもらう。そのためにはこれらの規定についても就業規則に記載することが重要である。
  また、復職に関してもトラブルになりやすいところなので、コミュニケーションをしっかりとって、事前に書面を渡して、職場復帰の要件や、職場復帰にいたるまでの流れについても細かく伝えておきたい。
  私傷病による休職期間は、一般的な中小企業であれば、賃金を支給していないことがほとんどである。労務不能であることを医師が証明している期間であれば、会社から十分な賃金が支給されない場合、健康保険から傷病手当金を受けることができるので、早めに対応したいところである。
  最後に、休職期間中で給与が0円であっても在籍している以上、社会保険料は毎月一定額が発生するので、社会保険料や住民税を会社に期限を設けて振り込んでもらうというルールを就業規則に細かく規定するとともに、本人にはきちんと給与明細書を発行して、振込みについて口頭および文書による案内を出しておくのが望ましい。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.08.24
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