>  今週のトピックス >  No.3072
26年度の国税の滞納残高1兆646億円、16年連続で減少
● 滞納残高はピーク時の平成10年度の約38%まで減少
  国税庁が発表した「平成26年度租税滞納状況」によると、今年3月末時点での法人税や消費税など国税の滞納残高が、前年度に比べ6.7%減の1兆646億円となり、平成11年度以降16年連続で減少したことが明らかになった。新規発生滞納額は前年度に比べ8.0%増の5,914億円と6年ぶりに増加したものの、整理済額が6,681億円(前年度比1.2%減)と新規発生滞納額を大きく上回ったため、滞納残高は減少した。
  今年3月までの1年間(平成26年度)に発生した新規滞納額は、前年度より増加したものの最も新規滞納発生額の多かった平成4年度(1兆8,903億円)の31.3%と低水準を維持している。また、平成26年度の滞納発生割合(新規発生滞納額/徴収決定済額)は1.1%と前年度から横ばいとなった。平成16年度以降、11年連続で2%を下回り、前年度同様、国税庁発足以来、最も低い割合となっている。この結果、滞納残高はピーク時の平成10年度(2兆8,149億円)の37.8%まで減少した。
● 消費税の新規滞納発生額が10年連続で最多
  税目別にみると、消費税は、新規発生滞納額が前年度比17.1%増の3,294億円と6年ぶりに増加し、税目別では10年連続で最多、全体の約56%を占める。一方で、整理済額が3,380億円と上回ったため、滞納残高は同2.4%減の3,477億円と、15年連続で減少した。
  法人税は、新規発生滞納額が同2.4%減の674億円と2年ぶりに減少し、整理済額が826億円と大きく上回ったため、滞納残高も同10.7%減の1,267億円と7年連続で減少した。
  景気回復により税収は増えているものの、こうした新規滞納の未然防止、大口・悪質事案や処理困難事案を中心に厳正・的確な滞納整理を実施したことで、今年3月末時点での全税目合計の滞納残高は、前年度を6.7%下回る1兆646億円となり、16年連続で減少したわけだ。
  滞納残高が1兆5,000億円を下回ったのは、平成2年度以来19年ぶりとなった平成21年度から6年連続となり、今後1兆円を下回る可能性も大きくなっている。
● 26年度の滞納整理の訴訟提起は171件
  国税庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。
  原告訴訟に関しては、平成26年度は171件(前年度146件)の訴訟を提起した。訴訟の内訳は、「差押債権取立」15件(同12件)、「供託金取立等」7件(同7件)、「その他(債権届出など)」146件(同120件)のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が3件(同7件)となった。そして、係属事件を含め172件が終結し、国側勝訴が27件、敗訴が1件、取下げが9件、和解が1件だった。
  また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、特に厳正に対処している。同免脱罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科とされている。平成26年度は、1年間の告発件数では過去最多の昨年度を2件上回る8事案を同罪で告発、12人を起訴し全員が有罪、うち5人に実刑判決が出ている。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2015.08.24
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