> 今週のトピックス > No.3075 |
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人民元切り下げで中国経済はどこへゆく?
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![]() ■ 元の通貨価値を下げたことで相対的にドル高、円高に
中国人民銀行(中央銀行)は、人民元の基準値を8月11日から3日連続で大幅に切り下げた結果、基準値ベースで、4.5%以上の元安ドル高となった。
為替相場には、主に@変動相場制、A管理フロート制、B固定相場制の3つがある。変動相場制は為替の変動を規制せず、自由な取引の中で為替レートが決められる制度で、日本やアメリカなどが採用している。管理フロート制は通貨当局が定める相場を基準値として、一定の変動幅を定めた範囲内で取引する制度で、中国などが採用している。そして固定相場制は為替相場を固定する制度で、日本でも1971年まで「1ドル360円」で固定されていた。中国では、人民元が誕生して以来「固定相場制」を取っていたが、その後「通貨バスケット制」に移行し、2005年からは「管理フロート制」を取っている。 ここで、元とドル、円の関係を整理したい。今回の「元が切り下げられる」というのは、「通貨価値が下がること」を意味する。例えば下図のように、1ドル=6.25元が1ドル=6.5元になるとドルに対して元が安くなる。対日本円では、1元=20円だったものが、1元=18円になることを元安円高という。例えば、1ドル=6.25元=125円、1人民元=20円の場合、1ドル=6.5元の元安になると、ドルと円の関係が1ドル=125円で変わらなければ、元と円の関係は、1元=19.23円となる。1元あたり、77銭円高になったことになる。 ![]() ■ 中国からの“黄砂”が世界を激震
中国当局が元を切り下げた主な理由は、中国経済が減速しているからだ。元の切り下げが発端となり、世界的に株安となった。NYダウも8月17日の終値17,545.18ドルから8月25日には15,666.44ドルまで1,879ドルも急落した。また、不動産バブルが今、臨界点に達しており、シャドーバンキングの破たんが起き始めているのも不安要因だ。シャドーバンキングとは銀行が金融規制を回避するため、簿外で融資していることをいい、不動産バブルの元凶ともなっている。
これはアメリカのサブプライムローンとよく似ている状況だ。金融引き締め政策により金利が引き上げられると、投資家は不動産投資から手を引き、その結果、不動産バブルの崩壊が予想される。そのため、人民元を引き下げることで、元安誘導で輸出を刺激して景気のテコ入れを図りたいと中国当局は考えたようだ。人民元相場の基準値は3日間で4.5%以上切り下げられたわけだが、為替レートを引き下げることで輸出競争力が増し、外需で経済成長を支えることができるわけだ。 ただ、この政策は諸刃の剣になりかねない。中国の企業が海外に投資する場合、元安になると投資する金額が元ベースでは膨らむため、海外への投資を控える可能性が出てくる。その結果、国内にマネーがだぶつき、不動産バブルを更に助長させるリスクもある。今回の引き下げは、中国景気が危機を迎えていることの現れだろうが、小手先の経済対策は第2のリーマンショックを引き起こしかねない。2007年〜2008年の世界金融危機の再来とならないようにと願うばかりだ。 ![]() ![]() ![]()
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2015.08.31 |
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