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来年1月から適用の新スキャナ保存制度の申請開始迫る
● 3万円以上の契約書や領収書もスキャナ保存可能に
  平成27年度税制改正の一環として「国税スキャナ保存制度」が抜本的に見直され、要件緩和等が行われた。この新しいスキャナ保存制度の適用申請日が約1ヵ月後に迫っている。
  スキャナ保存制度とは、一定要件を満たせば契約書や領収書などの国税関係書類をスキャナ保存することを認める制度だが、ペーパーレスとなる上に、紙での保存の煩雑な作業や人的コストが解消するため、地味ながら人気のある制度だ。
  平成27年度税制改正では同制度が大幅に緩和され、スキャナ保存の対象となる契約書及び領収書に係る金額基準(現行3万円未満)が廃止され、3万円以上の契約書や領収書もスキャナ保存ができるようになる。同時に電子署名や書類の大きさ等の情報保存も不要となり使い勝手が大幅によくなった。
  ただし、新たに適正事務処理要件が設けられ、不正防止のためのチェック機能が求められている。契約書や領収書、資金移動等直結書類(納品書・約束手形等)の重要書類については、適正な事務処理の実施を担保する規定の整備と、これに基づき事務処理を実施していることをスキャナ保存に係る新たな要件とすることとされる。ここでいう「適正事務処理要件」とは、内部統制を担保するために、相互けん制、定期的なチェック及び再発防止策を社内規程等において整備するとともに、これに基づいて事務処理を実施していることをいう。
● スキャナ保存の申請は開始日の3ヵ月前までに
  重要書類以外の見積書や注文書等の一般書類についても、スキャナで読み取る際に必要とされているその書類の大きさに関する情報の保存を不要とするとともに、カラーでの保存を不要とし、白黒での保存でも要件を満たすこととされるなど、要件が緩和される。地方税関係書類でも同様の対応を行う。
  新制度の適用は平成28年1月からで、平成27年9月30日以後に行う承認申請について適用される。スキャナ保存の申請は開始日の3ヵ月前までに行う必要があるため、平成27年9月30日に申請書を提出すれば、適用開始日である平成28年1月1日から新制度を適用できる。
  平成17年に電子帳簿保存法の改正により導入されたスキャナ保存制度は、スキャン前やスキャン後に求められる要件が数多くあり、その煩雑さを嫌って平成26年6月時点までに国税当局からスキャナ保存の承認を受けた累積件数は、わずか133件にとどまる。今回の要件緩和で、承認件数がどれくらい増えるのか期待されるところだ。
参考 国税庁HP「電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正されました」(平成27年8月)
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2015.09.07
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