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増え続ける医療事故報告、26年も記録更新
● 事故自体の増加よりも、事故の報告義務が定着化と分析
  医療事故情報収集等事業の開始から10年を経過した公益財団法人日本医療機能評価機構が、8月27日に平成26年の年報を公開しました。
  『医療事故情報収集等事業 平成26年 年報』によると、26年の1年間に医療機関から報告があった医療事故は3,194件となり、それまでの最高件数であった前年の3,049件から145件増で、調査開始以来、過去最多となりました。これは医療事故を報告することが着実に定着してきたことによるものと日本医療機能評価機構では見ています。
  報告があった計3,194件のうち厚生労働省が報告を義務付けている大学病院や特定機能病院など(報告義務対象医療機関)である275施設からは2,911件、任意で参加登録している病院など(参加登録申請医療機関)718施設からは283件でした。
  3,194件の医療事故の概要の内訳は「療養上の世話」をしている際に起きたものが最も多く1,212件、次いで「治療・処置」824件で、前年と同じくこの2つで半数以上を占めています(図1参照)。また、必ずしも因果関係が認められるものではありませんが、「事故の程度」として、死亡は263件、障害が残る可能性が高い状態になったケースも322件ありました(図2参照)。
図1 事故の概要
事故の概要 件数
療養上の世話 1212 37.9
治療・処置 824 25.8
薬剤 237 7.4
ドレーン・チューブ 197 6.2
検査 168 5.3
医療機器等 94 2.9
輸血 6 0.2
その他 456 14.3
合計 3194 100.0
図2 事故の程度
事故の程度 件数
死亡 263 8.2
障害残存の可能性がある(高い) 322 10.1
障害残存の可能性がある(低い) 859 26.9
障害残存の可能性なし 906 28.4
障害なし 717 22.4
不明 127 4.0
合計 3194 100.0
※  事故の発生及び事故の過失の有無と「事故の程度」とは必ずしも因果関係が認められるものではない。
※  「不明」には、報告期日(2週間以内)までに患者の転帰が確定しないもの、特に報告を求める事例で患者に影響がなかった事例も含まれる。
  事故に関係したと医療機関が判断した職種別では看護師が最も多く2,026件、次いで医師1,781件となっています(図3参照)。
図3 主な当事者職種
当事者職種 件数
看護師 2026
医師 1781
歯科医師 63
理学療法士(PT) 38
薬剤師 34
診療放射線技師 32
(上位6職種。以下省略)
  今年10月からは、医療機関を対象に患者の予期せぬ死亡事例があった場合などは新設された医療事故調査・支援センターに届け出るとともに、院内調査を義務付ける医療事故調査制度が始まります。開始されることにより、医療機関にとってこれまで以上に事実経過の把握、背景・要因の分析が必要となりそうです。
参考 公益財団法人日本医療機能評価機構HP「医療事故情報収集等事業」
  厚生労働省HP「医療事故調査制度について」
  
半田 美波(はんだ・みなみ)
社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。
  
  
2015.09.14
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