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雇用促進税制、1企業平均の控除税額は約163万円
● 雇用促進税制の適用を受けた企業は2割強
  雇用を増やす企業を減税する雇用促進税制は、平成23年度から3年間の時限措置として創設され、平成26年度から2年間、実施が延長された。
  労働政策研究・研修機構がこのほど発表した「雇用促進税制に関するアンケート調査」結果(有効回収数2,516社)によると、雇用促進計画の終了後に雇用促進税制の適用を受けたかどうかを尋ねると、「受けた」とする回答企業が22.1%と2割強、「受けなかった」企業が71.2%となった。
  企業規模別にみると、「受けた」とする割合は「5人未満」で5.1%、「5〜9人」で13.0%など、特に小さい規模の企業で適用を「受けた」とする割合が低い。
  同調査は、雇用促進税制の適用を受けるために、平成25年4月〜10月に雇用促進計画をハローワークに提出し、受け付けられた企業のなかから厚生労働省が抽出した企業8,208社を対象に平成26年11月10日〜11月26日に実施したもの。
● 雇用数や定着率で効果が高い雇用促進税制の適用企業
  雇用促進税制の適用を受けた企業(555社)に、控除された税額を尋ねると、回答した企業(409社)の平均額は163万1,562.3円で、中央値は、53万2,128.0円となっている。
  また、企業への適用効果は、雇用促進計画終了時の雇用保険一般被保険者の増加数について、雇用促進税制の適用状況別にみると、増加数の平均(0人は除き算出)は適用を「受けた」企業で21.0人、「受けなかった」企業で11.0人となり、両者の間で明らかな差がみられた。
  さらに、雇用促進計画の適用年度中に、労働者を新規採用した割合を雇用促進税制の適用状況別にみると、雇用促進税制の適用を「受けた」企業では94.2%が採用を行い、「受けなかった」企業では「採用しなかった」が19.0%にのぼった。また、適用年度中に採用した労働者の定着率をみると、適用を「受けた」企業の定着率の平均は84.3%、「受けなかった」企業では75.4%で、「受けた」企業のほうが労働者の定着率が高くなっている。
● 適用を受けた企業の9割強が今後も適用したいと回答
  雇用促進税制の適用状況別にみた、雇用促進税制の活用による採用計画などへの変化・影響(複数回答)は、適用を「受けた」企業では30.1%が「当初の採用予定人数より多く採用した」と回答。変化・影響に関する選択肢を1つでも選んだ「何らかの変化・影響があった企業」割合は41.3%だった。
  今後も雇用促進税制を利用したいかについて、雇用促進税制の適用状況別にみると、適用を「受けた」企業では92.1%が「したい」と回答している。
  同機構は、「雇用促進税制の適用を受けた企業の約3割が、当初の予定よりも採用を拡大させるなど、企業の採用活動に対する同税制の一定の影響が観察できた。また、制度活用の前歴がある企業ほど、今後の活用意欲も高いことが明らかになっており、今後も同種の施策が実施される場合、制度へのアクセスのしやすさや、制度周知の充実を図ることで、より一層の制度活用を導き出せる可能性がある」と指摘している。
参考  : 労働政策研究・研修機構「雇用促進税制に関するアンケート調査結果」(平成27年9月11日)
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2015.09.28
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