>  今週のトピックス >  No.3091
改正派遣法が施行、受入れ期間の制限が事実上撤廃に
● 雇用が不安定になるのではないかという懸念あり
  国会で注目されていた改正労働者派遣法が9月11日に成立し、早速9月30日より施行されている。労働者派遣法の改正案は、過去2度も国会に提出されながらいずれも廃案となり、3度目の国会提出でようやく成立したが、成立から施行日まで日数がわずか20日足らずしかなかったこともあり、詳細なルールや運用面の案内などの周知が追いついていない面もあった。
  今回の改正により、派遣労働者の部署を3年ごとに入れ替えれば企業は同じ派遣を使い続けることができる仕組みに変わったことが一番のポイントであるが、企業の派遣労働者の受入れ期間の制限が事実上撤廃されたことにより雇用が不安定になるのではないかという意見も多く、派遣社員の中にも今後のことを心配している人が結構いるようだ。
● 期間制限のルールが変更
  これまでは、専門的業務(通訳など26職種)は受入れ期間に制限がなかったが、それ以外の業務については、期間は上限が3年に定められていた。今回の改正でこの業務の区分がなくなり、同じ派遣先の事業所に対し、派遣できる期間は、原則3年が限度となる。
  ただし、派遣先が3年を超えて受け入れる場合は、派遣先の過半数労働組合等からの意見聴取を行うことで3年延長できるようになった(3年を超えて延長する場合はあらためて意見聴取が必要)。
  一方で同じ派遣労働者を、派遣先の事業所における同じ組織単位(企業における「課」)に派遣できる期間は、原則3年が限度となる。しかし、同じ事業所でも「課」を越えて異動した場合は、3年を超えて同じ人を派遣として受け入れることができる。
● 雇用安定措置を義務化するも、実効性には疑問も残る
  今回の改正では、企業側が派遣を受け入れやすくなった部分もあるが、派遣会社側に規制を厳しくした部分もある。特定労働者派遣事業(届出制)と一般労働者派遣事業(許可制)の区別を廃止し、全ての労働者派遣事業を許可制とした。
  また、雇用の安定を図るための措置として、派遣元事業主は、期間制限の上限に達する見込みの派遣労働者に対して直接雇用するよう派遣先に依頼し、それが成立しない場合は、新たな就業機会(派遣先)の提供などの措置をとることが義務づけられている。しかしながら、派遣先に直接雇用の依頼に応じる義務はなく、実効性には疑問が残る。今回の改正に対しては様々な反対意見があがっているので、現場のほうで混乱しないかが大変気になるところである。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.10.05
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