>  今週のトピックス >  No.3097
女性活躍推進法が成立、大企業には行動計画の届出義務
● 反応の鈍い企業、冷めている女性従業員も結構多い
  女性が、職業生活においてその希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備することを目的とする、「女性活躍推進法」が8月28日に成立した。これを受けて女性登用の取り組みを本格的に進めようとしている企業も徐々に増えてきているが、課題も多く、このような法律の成立にも反応が鈍い企業もあり、また対象者である女性従業員からは冷めた意見も出ているのが現状だ。
  今回は、この女性活躍推進法の概要について確認する。なお、従業員301人以上の大企業には、今後、行動計画の届出などの義務があるので注意されたい。
● 数値目標が課せられる301人以上の企業には負担が増える
  女性活躍推進法が成立したことにより、国・地方公共団体、301人以上の大企業は、
   (1)  自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
   (2)  その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表
   (3)  自社の女性の活躍に関する情報の公表
を行わなければならない(300人以下の中小企業は努力義務)。
  なお、一番のポイントとなるのは数値目標だが、必ず把握しなければならない項目は、以下の@からCであり、任意で把握することとする項目については今後、示される予定となっている。
   採用者に占める女性の比率
   勤続年数の男女差
   労働時間の状況
   管理職に占める女性比率
  いずれにしても平成28年4月1日までに、一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届出、公表しなければならないので、時間がない中で実務担当者にとっては厳しい状況にある。同法の趣旨などから経営陣に説明しないと進まない会社もあるので、段取りも含めて実務面の負担が増えることは間違いない。
● 新法は10年の時限立法――「女性の活躍の見える化」進むか?
  この法律は10年の時限立法となっており、集中的な取り組みを求めている。すでに同業種の企業間ではお互いを意識しており、数値目標には敏感になっているところもある。
  数値目標を具体的に公開することになるので、新卒の就活の際には、入社を希望する会社の考え方を知る上での情報としては大いに参考になるのは大変望ましいことである。
  これによって「女性の活躍の見える化」につながるわけだが、数値目標だけ一人歩きして、実態はまだ全然伴っていないという企業が出てくることも想定され、実際に現場が混乱するところもきっとあるはずである。
  前向きに考えれば時代が大きく変化していることを実感するいい機会になるといえる。この10年でどのように働き方が変わり、社会が変化することになるのか有識者も注目しているのは確かである。また中間管理職の意識改革にもつながり、自発的な取り組みが増えることになりそうである。
  法律で規定されれば、今まで行っていた同じような社内の活動を加速させることができるので好都合であるという現場の声もあるのは期待どおりである。
  女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることで認定マークを商品に付することができる。企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながるなどといったメリットがあり、女性の活躍はいうまでもなく企業の重要な経営戦略の1つになるといえるだろう。
参照  : 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.10.19
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