>  今週のトピックス >  No.3113
疑わしき事業場の6割で違法な時間外労働を摘発
● 長時間労働削減のために厳しい監督指導を実施
  厚生労働省では、9月28日に長時間労働が疑われる事業場に対して、労働基準監督署が監督指導した実施結果を公表した。具体的には、平成27年4月から6月までの期間に、1か月当たり100時間を超える残業が行われたとされる事業場、長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場を対象に、延べ2,362事業場に対して監督指導を行ったもので、このうちの約63%に当たる1,479事業場で違法な時間外労働が、また、約11%に当たる252事業場で賃金不払残業が確認されている。
  厚労省では、これらの事業場に対して是正・改善状況の確認を行い、是正が認められない場合は書類送検も視野に入れて対応するなど、長時間労働を削減するために今後も積極的な対応を行っていくという。
  違法な時間外労働は許さないという同省のスタンスがはっきりとあらわれており、企業側もこれらの指導を重く受け止めて具体的に改善活動を行わなければならず、単純に人手不足でやむを得ないというような言い訳だけでは通じないということを理解しておきたい。
● 1か月当たり100時間超の時間外労働が恒常化?
  監督指導を実施した2,362事業場のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場は次のとおりであった。
  違法な時間外労働があった1,479事業場のうち、時間外労働(法定労働時間を超える労働のほか法定休日における労働も含む、以下同様)の実績が最も長い労働者の時間数が、1か月当たり100時間を超えていたのは921事業場(62.3%)もあった。そのなかで1か月当たり200時間超のところに限ってみても35事業場(2.4%)を数えており、このような状態が是正されないなら、過労死や過労自殺、うつ病の発症などにつながるということは想像に難くない。
  一方、賃金不払残業があった252事業場のうち、時間外労働の最も長い労働者の時間数が、1か月当たり100時間を超えていたのは118事業場(46.8%)もあった。
  なお、過重労働による健康障害防止措置が未実施のところは406事業場であった。
● 過重労働解消キャンペーンを機会に改善を
  厚生労働省では、11月を「過重労働解消キャンペーン」期間と位置づけ、長時間労働の削減など過重労働解消に向けて周知・啓発活動に集中的に取り組んでいる。フリーダイヤルによる全国一斉の「過重労働解消相談ダイヤル」を実施し、都道府県労働局の担当官が相談に対応している。また、労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等を端緒に、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等を把握し、重点監督を実施することになっている。
  なお、厚生労働省は、労働基準法等の問題がある事業場に関する情報収集のために専用のメール窓口を設けている。従業員から簡単に情報提供しやすい環境になってきていることから、このような通報がきっかけで経営に影響が出る恐れもあるので、特に労働時間の問題については気になるところを1つ1つ早めに改善していくべきである。
参照  : 厚生労働省HP「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します」
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2015.11.16
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