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生命保険にもマイナンバーの影響は大きい!
● マイナンバーの運用は平成28年1月から開始
  みなさんのもとには、「通知カード」がもう届いたでしょうか。
  平成27年10月から11月にかけて、各世帯に世帯住民のマイナンバー等が記載された「通知カード」が送付されており、いよいよ、マイナンバー制度のスタートです。
  マイナンバー制度とは、ご存知の方も多いと思いますが、「社会保障・税番号制度」のことで、日本国内の全住民に通知される、一人ひとり異なる12桁の番号(マイナンバー)のことです。
  そのマイナンバーの実際の運用が、平成28年1月から社会保障・税・災害対策の行政手続きで始まります。
  マイナンバーは、生涯利用する個人を特定する番号で、原則変更されません。このため、身元を証明するための身分証明書や各種書類などが不要となり、社会保険の手続きや源泉徴収票などの行政手続きにおける様々な確認作業の省力化・簡素化が図られる見通しです。
● 事業者の取扱い
  事業者は、社会保険の手続きや源泉徴収票の作成などにおいて、従業員などからマイナンバーの提出を受け、書類などに記載していくことになります。
  マイナンバーは従前の個人情報に比較して、より重要なものですので、法律で定められた範囲以外での利用が禁止されています。また、その管理にあたっては、安全管理が義務付けられています(厳正なる罰則があります)。
  ポイントとなるのは、ここでいう事業者には生命保険会社などの保険会社も含まれることです。
  保険会社は、一定要件を満たす保険金等の支払いの際に、税務署に支払調書を提出していますが、マイナンバー制度の導入後は支払調書にマイナンバーを記載することが法律上の義務とされています。
  この支払調書へのマイナンバーの記載は、平成28年1月から運用開始とされていることから、契約者等は保険会社にマイナンバーを教える必要があります。
  この場合、同一の契約について契約者と受取人が異なる場合、両者のマイナンバーを伝えることとなります。
● マイナンバーの本当の意図は所得の捕捉
  従来の支払調書の名寄せ作業は、住所・氏名・生年月日を中心に行われているはずであり、特定の個人の名寄作業は、膨大な事業者の存在を考えれば、必ずしも簡単なことではなかったものと考えられます。
  支払調書にマイナンバーを記載することにより、税務当局はマイナンバーを基軸に名寄せが簡単に行えるようになり、個人の所得が的確に把握できるようになります。
  また、同一の契約について契約者と受取人が異なる場合、それぞれのマイナンバーが記載されることから、税務当局は相続税・贈与税の識別もより簡便に行えるようになるはずです。
● 将来的には預貯金口座へのマイナンバーの付番が…
  実は、マイナンバーの影響は、支払調書にとどまりません。将来的に(2018年以降と見込まれています)預貯金口座への付番が予定されているのです。
  もともと、預貯金口座における課税は源泉分離課税であり、源泉徴収の段階で納税が完了するため支払調書の提出は行われていません。一方、上記で述べたように保険会社等は支払調書の提出が求められています。
  そこには、所得の捕捉面でのアンバランスがあったと言われていました。
  ここで、預貯金口座にマイナンバーを付番すれば、税務当局等による所得の捕捉は格段にやりやすくなるはずです。
● 受取人以外への口座振込み、契約者以外の口座からの保険料引落しは危険水域に…!?
  保険会社により取扱いが異なると思われますが、保険金等を受取人以外の口座に振り込むケースや、契約者以外の口座から保険料を引落すケースが中にはあります。
  こういった場面で、預貯金口座へのマイナンバーの付番が実施されるようになると、契約上の名義人に対する課税(現状の支払調書は、原則この形態)から、より実態関係に近い課税(例えば、所得税・住民税が贈与税になる等)が行われるようになってくることも想定されます。
  お客さまのことを考えた場合、募集人としてアドバイスできることは、契約形態に沿った口座で取引しましょう、ということです。
  将来的に、厳しい対応が求められる場面もあるかもしれません。今後とも、マイナンバー制度の運用に注視していきましょう。
  
木下 直人(きのした・なおひと)
社会保険労務士、CFP、1級DCプランナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、保険コンプライアンス・オフィサー2級
  東京大学農学部卒。保険業界勤務。保険税務や社会保険・ライフプランなどの資材作成・研修講義はわかりやすく、面白いとの定評がある。
  
2015.11.30
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