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贈与税申告時の留意点について
● 改正された贈与税制度を受けての初めての申告
  贈与税については新しい税率体系が平成27年1月1日から施行されているため、来る贈与税の申告は改正贈与税制度のもとでの初めてのものとなる。そこで、申告の際の留意点について考えてみたい(なお、本稿では暦年贈与のケースについて取り上げる)。
● 父母や祖父母から贈与を受けた財産についての留意点
  相続税法改正によって相続税が増税の傾向となる一方、贈与税では直系尊属(父母・祖父母)からの贈与については優遇措置としての特例税率が新設され、相続税・贈与税の税率差に着目した「生前贈与」の積極活用が有効な税負担軽減対策の一つとして改めて注目されている。ただし、直系尊属からの贈与すべてが税制上優遇されるわけではなく、「特例贈与財産」として特例税率を適用できるのは、「受贈者(贈与を受けた者)が20歳以上」の場合に限られ、それも、贈与のあったタイミングではなく「贈与を受けた年の1月1日現在」で年齢を判定することとなる。たとえば、祖父母が孫に何かしらの財産を贈与しても、孫がまだ20歳未満であれば特例税率は適用されない。また、子への贈与の場合、贈与時点では子が20歳であっても、その年の1月1日現在でまだ20歳の誕生日が到来していなければ、一般の贈与の場合と同じ取扱いとなってしまう。
  なお、特例税率を適用するためには、受贈者の戸籍謄本など「受贈者の氏名、生年月日、その人が贈与者の直系卑属に該当するかどうか」を証明する書類の添付が必要になる。今回申告する贈与税の対象財産が「特例贈与財産」に該当するのかしないのか、十分な知識を持って申告することが求められる。
● 贈与財産に「特例贈与財産」と「一般贈与財産」が混在している場合の税額計算
  受贈者1人に対して贈与者が複数おり、さらに、20歳以上(1月1日現在)の受贈者に対する贈与者に、直系尊属とそれ以外の人が混在しているというケースも十分に考えられる。贈与税は受贈者が年間に贈与を受けた財産の合計額に対して課税されるので、「特例贈与財産」とそれ以外の財産(「一般贈与財産」)の合計に課税され、もちろん、基礎控除(110万円上限)も贈与財産の合計額から控除されることになる。
  それでは、贈与された財産に「特例贈与財産」と「一般贈与財産」という適用税率の異なる財産が混在する場合の税額はどのように計算するのかというと、(1) 贈与財産がすべて「特例贈与財産」とした場合と、「一般贈与財産」とした場合で計算したそれぞれの金額に対して、(2) 「特別贈与財産」および「一般贈与財産」の贈与財産合計額に対する割合で按分して算出した金額を、(3) 合計したものが納付税額となる。具体的には以下のようになる。
A:特例贈与財産額=300万円、B:一般贈与財産額=200万円、
C:合計贈与財産額(A+B)=500万円の場合の贈与税額の計算
手順(1) (贈与税額の速算表については省略)
  a:合計贈与財産額Cについて、特例税率を適用して計算した金額
    a=(C−基礎控除額)×特例税率−控除額=(500万円−110万円)×15%−10万円=48.5万円
  b:合計贈与財産額Cについて、一般税率を適用して計算した金額
    b=(C−基礎控除額)×一般税率−控除額=(500万円−110万円)×20%−25万円=53万円
手順 (2)
  @:特例贈与財産に対応する金額
    @=a×(A/C)=48.5万円×(300万円/500万円)=29.1万円
  A:一般贈与財産に対応する金額
    A=b×(B/C)=53万円×(200万円/500万円)=21.2万円
手順 (3)
  納付税額=@+A=29.1万円+21.2万円=50万3,000円
参考  : 国税庁「贈与税の税制改正のあらまし―平成27年1月1日施行―」
2015.12.03
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