>  今週のトピックス >  No.3124
行き過ぎたタワーマンション節税への監視を強化〜国税庁
● 市場価格と相続税評価額との乖離を利用した節税
  近頃、都市部を中心にタワーマンションの建設ラッシュが続いているが、ここへきてタワーマンションを利用した相続税の過度な節税に国税庁が監視の目を強めている。
  タワーマンション節税は、高層マンションなどの市場価格と財産評価基本通達に基づく相続税評価額との乖離を利用した相続税の節税スキームだ。相続税の課税ベースが拡大したことを受けて、新聞や雑誌にも頻繁に取り上げられている。
  分譲マンションの相続税評価額は、タワーマンションの高層階になるほど市場価額との乖離が大きくなりがちだ。土地は敷地全体を戸数で割って評価するため、高層で戸数が多いほど一戸当たりの持ち分は少なくなる。また、建物の相続税評価は固定資産税評価と同じ。市場価額に反映される「眺望」などのメリットは加味されないため、同じ間取り、同じ広さであれば低層階も高層階も同じ評価額になる。
  ところが、マンションの価格は高層階にいくほど値上がりする傾向にある。このため、相続税評価額は高層階でも底層階でも広さが同じであれば同額となることから、タワーマンションの高層階になるほど市場価額との乖離が大きくなるということで、相続税対策としてタワーマンションを購入する富裕層が増えているという。相続後、すぐ売却して現金化するケースもある。
● 当面は財産評価基本通達6項を活用して対応
  国税庁は、このようなタワーマンションを利用した過度の節税が増えている事態を問題視し、さきごろ全国の国税局に対して監視強化するよう指示を出したという。
  同庁では、市場価格と大きな開きが生じ得る現行の評価方法自体にも問題があるとみて、評価通達を見直す考えもある。当面は、評価通達の改正を待たずに、財産評価基本通達6項を活用して対応する方針だ。
  相続財産は、あくまで評価通達に定められた方法で評価することが原則だが、6項は、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」との例外的な評価の方法を定めている。6項の適用例として、これまでにも、マンションの価額を購入価額で評価するのが適法とした東京地裁平成4年3月11日判決などがある。
  また、「相続税評価額と市場価額の差が大きい物件で、相続後すぐに売却されたケース」などは、行き過ぎた節税とみなされ、今後、市場価額に引き戻して追徴課税される可能性がある。
  しかし、現時点ではどのようなケースが「行き過ぎ」とみなされるかの判断基準が明らかにされておらず、タワーマンションの評価を巡る法律・通達改正の見通しは不透明といわざるを得ない。今後の国税庁の動向に注目が集まる。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2015.12.07
前のページにもどる
ページトップへ