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平成28年度診療報酬改定の基本方針が提示
  12月2日、厚労省の社会保障審議会・医療保険部会で、平成28年度の診療報酬改定にかかる基本方針案が提示された。すでに11月20日の同部会で骨子案が示されたが、その一部に修正がほどこされた形だ。
  地域包括ケアシステムの構築という大きな流れが形成される中、平成26年度改定では「地域包括ケア病棟」などが創設されたが、次期改定はこの流れがさらに加速するのは間違いない。特に着目したいポイントを取り上げてみよう。
● 改訂のポイントと重点課題
  改定の基本的視点は以下の4つ。
  @地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点。
  A患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点。
  B重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点。
  C効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点。
  となっている。このうち、「地域包括ケアシステムの構築」に則った@が、重点課題と位置づけられている。
  その@だが、具体的取組の方向性として、「川上」となる入院医療は急性期・回復期・慢性期の各段階における機能分化が示されている。一方、外来医療についても、大病院・中小病院・診療所の機能分化を図る。いずれも前回改定で掲げられているテーマだが、さらなる強化を図る誘導策が示されることになりそうだ。特に後者の「外来医療の機能分化」については、複数の慢性疾患を有する患者に対して療養上の指導や服薬管理、健康管理等の対応を継続的に行う機能を評価するとしている。そのために、かかりつけ医・歯科医、およびかかりつけ薬剤師・薬局への評価も大きな見直しが進みそうだ。
● 「病院から地域、在宅へ」の流れの加速が意味すること
  注目されるのは、入院医療の機能分化が強化される中で「病院から地域、在宅へ」という流れが加速することに関連して、多職種連携の取組を強化することの内容から「退院支援」という言葉がカットされたこと(当初の骨子案では含まれていた)。一方で、「患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるための取組推進」という文言が新たに加わっている。これはAにも関連することだが、「病院から地域・在宅へ」の流れの加速は、「患者の意に反した追い出し」ではなく、あくまで「患者の利益に通じるものである」ことを強調したい意図が垣間見える。つまり、地域包括ケアシステムの推進に際して、国民の合意形成を慎重に進めなければならない危機感の現れともいえる。
  ちなみに、並行して開催されている「療養病床のあり方検討会」では、「住まい」(つまり生活の場)の機能を強化した新たな選択肢が提示されている。たとえば、サービス付き高齢者向け住宅と医療機能のセット化を強化するといった類型が考えられる。ここには、医療機能に「治療・療養」だけでなく「生活の継続」という視点を加える流れが認められる。この「生活継続」にかかる評価が、今回の報酬改定でも1つのポイントとなりそうだ。
  その他として注目したいのが、今後労働力人口の減少とともに懸念される医療従事者不足への対応だ。この点について、地域医療介護総合確保基金の活用や勤務環境の改善、業務効率化の取組などが掲げられており、「医療従事者の働き方」の部分にも報酬上での踏み込みが予想される。こうしたポイントを頭に入れながら、年明けにも提示される具体的な報酬案に注目したい。
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<目次>
第1章 今回の介護保険制度改正の狙いは何か
第2章 まず、最も利用者の多い訪問・通所介護を掘り下げよう
第3章 特養ホーム等、施設の基本報酬ダウンと中重度者対応への重点施策
第4章 在宅系サービスでは、“重点化”はどう反映されたのか
第5章 国の最重要施策“認知症”対策と介護保険との関係はどうなるのか?
第6章 手厚く加算されたリハビリ・マネジメントの強化で仕事はどう変わるのか
第7章 介護職員の処遇改善はどのように進んだのか
第8章 総合事業による介護保険の「スリム化」そして“重点化”にどう対応したらいいのか
  
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2015.12.10
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