> 今週のトピックス > No.3134 |
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介護休業給付の給付率引き上げへ | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() ● 現状の40%から育児休業給付と同率に
政府がアベノミクス第2弾として打ち出している「介護離職ゼロ」策に関連し、12月8日に開催された厚労省の労働政策審議会・雇用保険部会において、「介護休業取得中の介護休業給付の引き上げ」が提案された。
介護休業制度を利用した場合、休業中の経済的支援に関しては、雇用保険の介護休業給付でまかなわれている。その基準は、これまで介護休業取得前賃金の40%と定められていた。しかし、介護休業の取得が(介護をしている人の)3%台と低迷する中、政府のかかげる「介護離職ゼロ」の実現に向けて給付率のアップが大きな課題となっていた。そこで、今回の雇用保険部会で、育児休業給付と同率の67%まで引き上げる方針が示された次第だ。 ![]() ● 高年齢者の雇用保険問題も
また、安倍政権による「一億総活躍社会」の流れとも関連し、これまで雇用保険の適用除外だった65歳以上の人を適用対象に含める提案もなされている。団塊世代が全員65歳以上となった現在、高年齢者の労働ニーズが高まっていることもさることながら、この年齢層が配偶者などの介護を行っているケースが多いという点でも大きな課題だ。
現状では65歳以上の場合、雇用保険上は高年齢継続被保険者となり、65歳以上に達した日以降に介護休業を開始した場合は給付を受けることができない。さらに、仮に失業となった場合、65歳以上の場合は失業手当ではなく、高年齢求職者給付金が一時金として支払われる。65歳未満の失業手当と比較してみると、(給付日数による比較では)3分の1程度に抑えられる可能性も高い。この一時金は年金との併給は認められているが、ここに家族への介護負担が絡んでくるとき、平成27年8月より一定以上所得者に対する「介護サービスの利用者負担」が2割に引き上げられたことなどが経済的に大きなダメージとなりやすい。こうした高年齢者の経済的困窮の課題を念頭におけば、昭和59年の雇用保険法改正以来続いてきた現行制度にメスを入れることは必須となっている。 ただし、65歳以上を雇用保険に含めるとなれば、高年齢者の雇用保険料の負担とともに、事業者側の負担も問題となる。この点について、今回の提案では、65歳以上の高齢者を一定以上雇用している事業者に対しての助成措置の検討も示されている。 ちなみに、今回の労働政策審議会の提言を受けての具体的な制度改正スケジュールとしては、平成28年1月からの通常国会で改正法案が提出される予定となっている。同時に、介護休業の分割取得を(制度上)可能とする育児・介護休業法の改正案も審議される予定だ。介護休業制度と介護休業給付にかかる雇用保険法は、いわば車の両輪のようなもので、どちらかが欠けても「介護離職ゼロ」という政策目標に向けた実効性は低くなる。 ただし、育児と異なり「介護」というのは、「いつまで」という期限の先読みがしにくい。また、介護サービスを支える人材不足がさらに深刻化する中、国が進めようとしている介護施設等の増設に追いつくだけのマンパワーが足りるのかどうかも大きな課題となる。仮に介護保険外の民間サービスの活用も必要となってくる場合、介護休業給付を育児休業給付と揃えるだけでよいのかどうか(もっと給付率を高めるべきではないか)という議論が出てくる可能性もあるだろう。 ![]()
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2015.12.24 |
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