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29年1月から「スイッチOTC薬控除」始まる
● セルフメディケーションの推進として
  医療費の増大は、国の財政を圧迫させつつあります。それを受けて昨年12月16日に与党が発表した平成28年度税制改正大綱では、セルフメディケーション(自主服薬)の推進を図るために、スイッチOTC薬を購入した一定額以上の費用について所得控除制度(医療費控除の控除額計算上の特例措置)を導入するとしています。
  セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽い身体の不調は自分で手当てをすること」(WHOによる定義)です。具体的には、体調の管理、病気の予防を積極的に行いつつ、一般用医薬品等を活用して健康管理を行うこととされています。
  OTC(Over The Counter)薬は、カウンター越しにアドバイスを受けた上で購入できる薬を指し、薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方箋なしに買うことができる市販薬のことです。
  スイッチOTC薬は、医療用処方薬から市販薬に転用したもので、医療用から一般用に切り替えた(スイッチした)ことに由来しています。使用実績があり、比較的副作用が少なく、安全性の高い成分の薬で、かぜ薬や胃腸薬に限らず、水虫の薬や禁煙補助剤など種類が増えてきています。
● スイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の概要
  健康の維持増進および疾病予防への取組みとして、特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診のいずれかを受けている人および生計を一にする家族が、一定のスイッチOTC薬を購入して、その年間合計額が1万2,000円を超えた場合は、超えた部分の金額(上限は8万8,000円)について、総所得金額から控除するというもの。対象となる合計額には、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額は含まれません。
  上記の検診、予防接種は医師の関与があるものに限られます。
  対象期間は、平成29年1月1日から平成33年12月31日までです。
  ここでいう一定のスイッチOTC薬とは、要指導医薬品および一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品を指します(類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く)。
  なお、この特例は、所得税・住民税共通の取扱いであり、また、この適用を受ける場合には、現行の医療費控除の適用をあわせて受けることはできないとされています。
  具体的な取扱いについては、医療費控除にかかる執行面の実情等も踏まえ、今後、環境整備が行われるとされています。
※平成28年度税制改正大綱については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
  
木下 直人(きのした・なおひと)
社会保険労務士、CFP、1級DCプランナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、保険コンプライアンス・オフィサー2級
  東京大学農学部卒。保険業界勤務。保険税務や社会保険・ライフプランなどの資材作成・研修講義はわかりやすく、面白いとの定評がある。
  
2016.01.07
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