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10月からパートに適用される「106万円の壁」とは?
● パートへの社会保険の適用範囲が拡大
  2016年10月から、パートタイマー(以下、パート)への社会保険の適用範囲が拡大される。勤務時間が週20時間以上で年収106万円以上のパートは、一定の要件を全部満たした場合には、新たに社会保険に加入の対象となる。今回は、その要件について詳細を確認するとともに新たにできる「106万円の壁」についても解説する。
● 501人以上の企業に勤務する方だけが対象
  今回の改正で新たに社会保険の対象となるのは、次の要件をすべて満たした人となっている。
   【2016年10月施行の社会保険適用対象者】
   勤務時間が週20時間以上
   1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上
   勤務期間が1年以上見込み
   従業員501人以上の企業に勤務している人
   学生は対象外
  ポイントは、従業員が501人以上の企業だけが対象ということ。基本的にはそれほど該当する人は多くないはずだが、それでもこの改正で新たに対象となるのは25万人くらいと見込まれている。
  これまでは、健康保険の扶養要件である年収見込130万円未満という範囲内で働いている人も多かった。今回の改正では新たに106万円の壁が出現することになる。年収が106万円を超えると、社会保険料の支払いが発生することになり、その結果、手取りが少なくなってしまうので106万円以内で働こうという気持ちになりがちだ。そこでこの106万円が大きな壁となる。
● 社会保険加入による給付のメリットはたくさんある
  さて、現在のパートの社会保険の適用要件は、次のとおりとなっている。
   1日又は1週間の労働時間が正社員の概ね3/4以上であること
   1カ月の労働日数が正社員の概ね3/4以上であること
  正社員の週の所定労働時間が40時間の場合は、週30時間以上勤務するパートの場合、原則として加入となる。
  今回の改正の対象となり、週20時間以上で社会保険に加入することになるなら、これを機会にもう少し長い時間働いてみようと思うパートも出てくるはずである。会社としては、優秀なパートであれば、ぜひとも労働時間を見直してみるべきである。
  その一方で、今回の改正で社会保険適用対象となるパートが発生する会社の場合、社会保険に加入させたくないと思っているのであれば、これまでのパートの契約を週20時間未満に変更して不足する分は新規採用で補う方法が考えられよう。また、パート自身が社会保険加入を望まないのであれば、自ら転職して従業員数501人未満の会社に勤務するしかない。
  パートであっても社会保険に加入することになれば、正社員同様に給付面でのメリットを受けることができる。老後の年金も増えるし、いざというときには障害厚生年金も受給できる。また健康保険からは傷病手当金や出産手当金も貰える。
  単純に手取り額だけでなく、長期的な視点で考えてみることも必要である。今回の改正では、501人以上の企業が対象となっているが、将来はすべての企業に適用範囲が拡大していく方針となっているので、その動きにも注目しておきたい。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2016.01.18
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