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消費税の軽減税率は平成29年4月1日から導入
● 軽減税率、酒類・外食を除く飲食料品に適用
  平成28年度税制改正大綱には、消費税の軽減税率(8%)は消費税率10%引上げ時の「平成29年4月1日から導入する」と明記された。併せて、複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)を平成33年4月1日から導入する。それまでの間については、現行の請求書等保存方式を基本的に維持しつつ、区分経理に対応するための措置を講ずる、とした。
  軽減税率の対象となる「軽減対象資産の譲渡等」(仮称)については、(1)飲食料品の譲渡、(2)定期購読契約が締結された新聞の譲渡、とされる。飲食料品とは、「食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)であって、食品衛生法上の飲食店営業、喫茶店営業その他の食事の提供を行う事業を営む事業者が、一定の飲食設備のある場所等において行う食事の提供を除く」と定義した。
  つまり、飲食店内で食べる場合を「外食」として定義して軽減税率の対象外となり、テイクアウトや持ち帰り、宅配などは軽減税率の対象となる。飲食料品と飲食料品以外の資産が一体となっている資産については、飲食料品に該当しない。ただし、一定金額以下の資産であって、その資産の主たる部分が飲食料品から構成されているもの、例えばおまけ付きの菓子などについては、その全体を飲食料品として軽減税率の対象とする。
  (2)の定期購読契約が締結された新聞とは、一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行される新聞に限る。
  軽減税率制度の適用時期については、平成29年4月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れ並びに保税地域から引き取られる課税貨物について適用する。
  なお、軽減税率制度の導入に伴い必要となる約1兆円規模の財源については、与党税制改正大綱では「2016年度末までに歳入及び歳出における取組みにより、与党の責任において、確実に安定的な恒久財源を確保する」こととして、先送りされている。
● インボイス導入までの消費税額計算は簡素な経理方式
  一方、軽減税率制度が導入されると、複数税率を区分経理しなければならず、事業者の負担が増す。税額計算の方法は、インボイス制度として「適格請求書等保存方式」を平成33年4月から導入する。それまでの間は、簡素な方法として「区分記載請求書等保存方式」とするとともに、複数税率に対応した区分経理が困難な中小事業者や、システム整備が間に合わない事業者等に配慮して、税額計算の特例を創設する。
  適格請求書等保存方式が導入されるまでの間における仕入税額控除制度については、現行の請求書等保存方式を基本的に維持する。ただし、課税仕入れが軽減税率対象品目に係るものである場合には、帳簿に記載すべき事項として「軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨」を加え、請求書等に記載すべき事項として「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」及び「税率の異なるごとに合計した対価の額」を加える。
  税額計算の特例は、課税売上高が5,000万円以下の中小事業者が、平成29年4月から33年3月までの期間に、売上を税率の異なるごとに区分することが困難なときは、通常の事業を行う連続する10営業日の課税資産の譲渡等に占める軽減対象課税資産の譲渡等の割合、又は卸売業及び小売業に係る課税仕入れ等に占める軽減対象課税資産の譲渡等にのみ要するものの割合を用いて、その期間の売上税額を簡便に計算することを認める措置を設ける。
  この卸売業及び小売業に係る課税仕入れ等に占める軽減対象課税資産の譲渡等にのみ要するものの割合を用いて売上税額を計算する措置については、簡易課税制度の適用を受けない課税期間に限り、適用できる。さらに、主として軽減対象課税資産の譲渡等を行う事業者が、割合の算定についても困難な事情があるときは、その割合を50%として計算することができるという、零細商店などに配慮した特例も認めている。
  他方、仕入税額の計算の特例も設け、課税売上高が5,000万円以下の中小事業者が、平成29年4月から30年3月までの期間に、国内において行う卸売業又は小売業に係る課税仕入れ等を税率の異なるごとに区分することが困難なときは、卸売業及び小売業に係る課税資産の譲渡等に占める軽減対象課税資産の譲渡等の割合を用いて、その期間の仕入税額を簡便に計算することを認める特例措置を講じる。
  これらの売上税額の計算の特例と仕入税額の計算の特例は、課税売上高5,000万円以下の中小事業者以外の事業者も導入から1年に限り、可能となっている。
※平成28年度税制改正大綱については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2016.01.18
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