>  今週のトピックス >  No.3149
労働者代表を正しく選出する方法とは?
● 締結した協定が無効になってしまうことも
  事業主が法定労働時間を超えて従業員を働かせるためには、時間外労働・休日労働に関する協定〔労働基準法36条に基づく労使協定、通称「36(サブロク)協定」という〕を労働者と締結しなければならない。36協定を締結する際に、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の中から過半数代表者(労働者代表)を選出し、労働者側の締結当事者とする必要がある。
  社員数がそれほど多くない中小企業において社内に労働組合があるケースというのは限られており、多くの中小企業では社員の中から労働者代表を選出しているわけだが、その労働者代表の選出方法に問題があると、そもそもの締結した協定自体が無効となってしまうことで大きなトラブルに発展するリスクがあるので、今回は正しい労働者代表の選出方法についてまとめることとする。
● 労働者代表が管理監督者でないこと
  そもそも労働者代表になることができるのは、労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないことという大前提がある。管理監督者とは、一般的には部長、工場長など、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指すが、労働者代表の選出に当たっては、管理監督者に該当する人、近いうちに就任する可能性のある人は避けた方が無難である。
  最も肝心なことは、労働者代表を選出するための正しい手続きがとられていなければならないことだ。すなわち、36協定を締結するための労働者代表を選出することを従業員に明らかにしたうえで、投票、挙手などにより選出することが必要である。もちろん投票、挙手の他に、労働者の話し合いや持ち回り決議などでも構わないが、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きがとられていることが必要となる。
● 会社側が労働者代表の選出支援をするのは可能
  労働者代表選出について、下記のケースでは無効となるので注意しなければならない。
     1. 使用者が一方的に労働者代表を指名している場合
     2. 親睦会の代表者が自動的に労働者代表となっている場合
     3. 一定の役職者が自動的に労働者代表となることになっている場合
     4. 一定の範囲の役職者が互選により、労働者代表を選出することになっている場合
  多くの企業が労働者代表の選出方法で苦労しているようだが、社員から依頼された旨を明らかにした上で、会社が代わりに代表選出の方法や具体的な手続きを行うのは可能なので、選挙前に立候補者を募集するなどの一連の業務などを総務担当が代行するのは問題ない。また、従業員が集まる朝礼や全体会議などの機会に時間を割いてもらい、選出業務をするのも1つの方法である。適切かつ上手に労働者代表を選出することは、今後の企業経営にもプラスに働くので、法律に違反した選出とならぬようにしたいところである。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2016.02.01
前のページにもどる
ページトップへ