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会社が押さえておきたい「健康診断」のポイント
● 会社には従業員の健康管理義務がある
  事業者は従業員を雇用している以上、きちんと健康診断を受診させる義務がある。漠然とはわかってはいるものの健康診断には様々なルールが定められているので、今回はその中でも最低限押さえておくべきポイントについてまとめるものとする。
● 雇入れ時の健康診断と定期健康診断
  健康診断はおもに、一般労働者を対象とする「一般健康診断」と、特定の有害業務に従事する労働者を対象とする「特殊健康診断」の2つに分けられる。会社が必ずやらなければならない一般健康診断には、「雇入れ時の健康診断」と「定期健康診断」の2つがある。健康診断に関しては、労働安全衛生法という法律で明確に規定されているので、事業主には受けさせる義務があり、従業員は健康診断を受診することが義務づけられている。
  雇入れ時の健康診断は、常時使用する労働者を雇入れる直前又は直後に実施しなければならず、定期健康診断は、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に医師による健康診断を実施することになっている。
  なお、雇入れ時の健康診断については、医師による健康診断を受けてから3か月を経過しない者を雇い入れる場合、その労働者が健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、その健康診断の項目に相当する項目については省略することができるので、この点は押さえておきたい。
● 健康診断の受診の対象となるのは?
  健康診断に関しては、受診させなければいけない対象者の範囲についてもよく質問があるところであるが、正社員は当然としてさらにパートタイマー等でも下記の条件をいずれも満たす場合、受診対象となる。
   1   1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の労働時間の4分の3以上
   2   雇用期間が次のいずれかに該当する者
@雇用期間の定めがない者
A雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上使用される予定の者
B雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上引き続き使用されている者
● 健康診断の費用と受診する時間
  受診の際にかかる費用や受診時間についても気になっている方は多い。これらについては、明確に法律で規定されているわけではない。しかしながら、行政通達に定期健康診断は会社に実施義務があるのだから当然この費用は会社が負担すべきとしているので、会社が負担することになる。もちろん、法定外の部分で従業員が任意で受診する項目や人間ドックに係る費用、再検査に関しての費用について会社が負担する必要はない。
  最後に、健康診断の受診に要した時間の賃金の支払いについては、労使間の協議によって定めるべきものとなっているが、円滑な受診を考えれば所定労働時間内の受診の場合は事業者が賃金を支払うことが妥当である。しかし、所定労働時間外の受診の場合は労働時間とはみなされないというのが一般的な考え方になるので、実務担当者及び経営者も基本的な考え方は理解しておきたいところである。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2016.02.15
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