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4月1日より障害者差別解消法が施行
〜医療・福祉従事者向けのガイドラインも〜
● 法整備と施行に至る背景とポイント
  平成28年4月1日より、障害者差別解消法(以下、差別解消法)が施行される。もともと我が国では、平成16年の障害者基本法(昭和45年制定)の改正で障害者差別の禁止についての基本的理念が明示された。その後、平成18年に国連において「障害者の権利条約」が採択され、我が国も同条約に署名したことで、障害者差別の禁止のための実効性ある国内法整備が求められ、それが今回の差別解消法の成立・施行の背景となっている。
  同法で注目されるのは、障害者をめぐる不当な差別的取り扱いの禁止について、国や地方自治体等のほか、事業者に対しても法的義務を設けたことにある。まず、国や地方自治体等は、それぞれの機関における「対応要領」を策定しなければならない(地方の策定は努力義務)。そして、事業者については、主務大臣が事業分野別の対応指針(ガイドライン)を策定する。そのうえで、主務大臣から事業者に対する報告徴収や助言、指導、勧告が行われる。罰則規定は設けられていないものの、著しい禁止事項からの逸脱については、行政指導などの効力が発揮されることになる。
  さらに、このガイドラインについては、障害者が社会生活を営むうえでの社会的障壁を除去するために、事業者側が「合理的な配慮」をしなければならない旨も定められている。具体的には設備内のバリアフリー化や障害者に配慮した対応・しくみの整備などがあげられる。これについては事業者側の努力義務となっているが、同法で相談・紛争解決の体制整備も盛り込んだ点で、障害のある当事者からの訴えによって、行政から事業者に対して何らかの対応を求めるケースも想定される。
● 事業者の対応ガイドラインとは?
  では、事業者側に求められる対応を示したガイドラインとはどのようなものか。たとえば、厚労省からは医療・福祉の事業者向けのガイドラインがすでに示された。顧客となる医療・介護・福祉のサービス利用者が心身に何らかの障害があるケースが多いことを考えれば、現場の隅々までガイドラインの中身を周知することがもっとも重要な業界の一つといえる。ここでは、特に医療関係事業者向けのガイドラインを取り上げてみたい。
  たとえば、「不当な差別的取り扱いと考えられる例」について見てみよう。まず。「障害があることを理由に診療・入院・調剤等(以下、診療等)を拒否すること」や、「医療の提供に際して必要な情報提供を行わないこと」、「正当な理由なく、保護者や支援者の同伴を診療等の条件とすること」などが示されている。また、「本人を無視して支援者・介助者や付添者のみに話しかけること」や「わずらわしそうな態度や患者を傷つけるような言葉をかけること」などもあげられている。
  こうしたケースで想定される一つが、知的・精神障害がある人や認知症の患者であろう(ちなみに、同法では「対象となる障害者」について、「いわゆる障害者手帳の所持者に限らない」と明示している)。こうした患者との接し方に慣れていない医師などの場合、上記のような対応をごく当たり前のように行ってしまう例も少なくない。こうしたケースを想定すれば、法施行前に医師会などによる普及・啓発の機会も求められてくるだろう。保険セールスなどの関わる可能性のある担当者も、顧客対応を想定したうえでガイドラインを一読しておくことをおすすめしたい。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2016.02.18
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