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労働基準監督署の調査を受ける際の“心得”
● いきなり予告なしでの立ち入り調査も
  中小企業経営者にとっては、税務調査に比べると労働基準監督署の調査はあまりなじみがないかもしれない。普段からきちんと労働基準法等を遵守し、正しい労務管理を行っていれば何ら問題はないが、時には何の予告もなく労働基準監督官が事業所にやってきて立ち入り調査することもあるので、慌てて間違った対応をすると大きなトラブルになり兼ねない。
  今回は、会社としてはどのようなことで労働基準監督署の調査が行われるのか、また、いざという時にどう対応すればいいのかを解説する。
● 調査の種類はおもに2つ
  まず労働基準監督署の位置づけであるが、厚生労働省の出先機関で都道府県労働局が上位組織となっている。各都道府県労働局の指揮監督を受けている労働基準監督署は、全国321署あり、労働基準行政の第一線機関として、労働基準法をはじめ所管する法律に基づき、労働条件確保・改善の指導、安全衛生の指導、労災保険の給付などの業務を行っている。
  労働基準監督署の調査は、労働基準法等の違反の有無を調査する目的で行われるが、主なものとして「定期監督」と「申告監督」(臨検)の2種類がある。
1.定期監督
  労働基準監督署が、スケジュールを組んで、定期的・計画的に実施する調査で、経済動向、労働災害発生状況、遵法状況などの分析結果から、対象事業場のリストを作成し、年度ごとに行われる。労働基準監督署から事前に来社することを文書で案内してくることが多い。
2.申告監督(臨検)
  従業員や退職者などからの申告(告発)に基づいて、その申告内容を確認することを中心に行われる調査だ。呼び出し調査もあれば、従業員の申告の裏をとるために事業所へ立ち入り調査(臨検)することある。在職中の従業員からの告発であれば申告監督であることを明らかにしないでやってくる。最近の傾向としては申告監督のほうが多く、従業員からの長時間労働や残業代の未払いについての告発が年々増えている。
● 労働基準監督官の権限と調査対応のポイント
  労働基準監督署の調査を行うのが労働基準監督官だ。労働基準監督官は是正のための指導や調査だけでなく、必要なら、特別司法警察員として、取調べなどの任意捜査や捜索・差押、逮捕などの強制捜査を行い、検察庁への送検まで行う。もちろん、いきなり逮捕や書類送検されるわけではなく、何度指導しても改善されない悪質なものに限られる。
  労働基準監督署の調査に対応するにあたっての注意点として、指導を無視したり出頭命令を拒否したりすることは絶対に行ってはいけない。
  また、出勤簿や賃金台帳などの資料の改ざんや虚偽の是正報告をすることも同様に行ってはならない。従業員に口裏を合わせるよう嘘を強要してはならない。
  労働基準監督官は、場合によってはメールやパソコンの起動記録などの履歴チェックも行うこともあるし、張り込みをしている場合もある。
  もちろん申告監督の場合、申告した従業員等から資料や内部の情報が当局に提供されていると想定すべきなので、それをふまえて対応したいところである。
  最後に、会社は調査に対して速やかかつ冷静に対応することがいうまでもなく一番大事であり、会社の主張をする際にも労働基準監督官の心象を害するような言動はとらないことが肝心である。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2016.02.29
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