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役員報酬、譲渡制限付株式も損金算入の対象に
● 業績に応じた報酬体系への移行を促す
  固定報酬が中心の現在の日本の役員報酬制度から、業績に応じた報酬体系への移行を促すため、役員報酬として付与する譲渡制限付株式を損金算入の対象とするなどの税制措置が、平成28年度税制改正法案により国会で審議されている。
  譲渡制限付株式は、一定期間譲渡することができない制限が付された現物株式で、役員報酬として付与することで、短期的な利益ばかりでなく、中長期的に業績向上を目指すことのインセンティブとなるなどの効果がある。
● ROE等を利益連動給与の指標に
  平成28年度税制改正法案では、役員給与の損金算入制度について、事前確定届出が不要の対象に、役員から受ける将来の役務提供に係る一定の譲渡制限付株式等による給与を加えるとともに、利益連動給与の算定の基礎となる利益に関する指標の範囲に、新たにROE(自己資本利益率)など、利益の額に有価証券報告書に記載されるべき事項による調整を加えた一定の指標等が含まれることを明確化するとしている。
  さらに、法人が個人(経営者等)から役務提供を受ける場合に、その対価として一定の譲渡制限付株式が交付されたときには、その役務の提供に係る費用の額は、原則として、その譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日の属する事業年度に損金算入することができるとされる。これらの改正法案が成立すれば、2016年4月1日以後に一定の譲渡制限付株式の交付に係る決議がされる譲渡制限付株式等から適用される。
● 株式報酬、業績連動報酬の柔軟な活用に向けた仕組みの整備
  法人税法では、役員に支給する給与のうち、(1)定期同額給与、(2)事前確定届出給与、(3)利益連動給与に該当するもののみ損金算入が認められる。実際には、より厳格な要件があり、民間企業からは役員の意欲を引き出すための報酬プランを作成する上で障害になっているとの指摘がある。また、昨年6月に閣議決定された「「日本再興戦略改訂」2015」でも、株式報酬、業績連動報酬の柔軟な活用に向けた仕組みの整備の必要性が謳われていた。
  そこで、平成28年度税制改正法案において、法人が役員給与等として付与する譲渡制限付株式を損金算入することや、利益連動給与の対象指標の範囲に、営業利益や経常利益に加えて、新たにROEなどの一定の利益関連指標が含まれることを明確化し、固定報酬中心の役員報酬制度を改め、役員に対する業績に連動した報酬や株式による報酬による経営者等への適切なインセンティブの導入の促進を図るわけだ。
※平成28年度税制改正法案については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2016.03.14
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