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最先端がん治療法「BNCT」、臨床試験開始
● 難治性がんの治療法として注目されている「BNCT」
  BNCT(Boron Neutron Capture Therapy:ホウ素中性子捕捉療法)は、核分裂現象を利用したがんの放射線治療で、ホウ素を含んだ専用薬剤(BNCT用ホウ素薬剤)をがん患者に投与(点滴)し、がん細胞に集まったホウ素原子に中性子を照射して、ホウ素を核分裂させることで発生したα粒子(ヘリウム原子核)とリチウム原子核でがん細胞を死滅させる。それぞれの分裂した原子核はがん細胞1個分に当たる数マイクロメートルしか移動しないため、周囲の正常な細胞などをほとんど傷つけることなく、ホウ素を取り込んだがん細胞のみを細胞レベルで選択的に破壊することが可能となる。
  X線治療や粒子線治療など、従来の放射線治療と比べてがん細胞だけを攻撃する選択性の高さから効果が高く、周囲の正常細胞への影響が少ない最先端の治療法として世界的にも期待されている。難治性の再発・浸潤がんに効果が期待されている。
  治療(照射)回数は基本的に1回で、患者は治療台の上に寝た姿勢で30分〜1時間で治療が終わる。
● 脳神経疾患研究所附属南東北BNCT研究センターで臨床試験開始
  2016年2月25日、脳神経疾患研究所は同研究所に附属する南東北BNCT研究センター(福島県郡山市)で報道機関向けの発表会を開催し、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の臨床試験を開始すると発表した。BNCTの治験を実施するのは、世界の病院で初めてとなる。
  今までBNCTは原子炉があるところでなければできなかったが、中性子を原子炉から取り出して利用するのではなく、加速器を使って中性子を発生させ、病院内での治療を可能にするシステムの安全性と有効性を確認し実用化を図る。今回の臨床試験の対象は「再発膠芽腫(こうがしゅ=非常に悪性度の高い脳腫瘍)」24例を目標に実施され、治療に使う薬剤と治療システムの薬事承認を、2018年度内にも承認申請を行い、世界初の一般医療機関におけるBNCTの治療開始を目指す。
● 国立がん研究センター、2016年度中の臨床試験を目指す
  国立がん研究センターは、同センター中央病院にリチウムターゲットを用いたBNCTシステム(加速器で加速された陽子線をリチウムに衝突させることで中性子を生成するもので、人体への悪影響の大きい高速中性子の混在が少ないことが特徴)を導入、性能試験を経て2015年11月に原子力安全技術センターの施設検査に合格した。今後、物理試験や生物試験を経て、早ければ2016年度中の臨床試験を目指す。また、世界初となるリチウムターゲットの病院設置型BNCTシステムの実用化と普及などについても検討していくとしている。
2016.03.17
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