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経営承継円滑化法等の一部改正の施行は4月
  平成27年8月に第189国会で成立した中小企業経営承継円滑化法及び小規模企業共済法の一部改正について、その施行期日を平成28年4月1日とする施行期日令が閣議決定された。改正のポイントは、遺留分に係る民法の特例制度を親族外承継にも拡充、小規模企業共済制度における親族内承継等に関する共済金の支給額が引き上げられたことだ。
● 親族外承継も「遺留分特例制度」の対象に
  中小企業経営承継円滑化法の一部改正は、中小企業における経営の承継をより円滑化するため、対象が親族内承継に限定されている遺留分に係る民法の特例制度を親族外承継にも拡充するものだ。改正の背景には、事業承継の形態が多様化し、20年前は親族内承継が約9割だったが、近年は親族外承継が約4割と増加傾向であるため、親族外承継を円滑化するための措置を講じることが必要との考えがあった。
  そこで、中小企業経営承継円滑化法の一部改正において、対象が親族内承継に限定されている「遺留分特例制度」について、親族外承継の際にも活用できるように、制度を拡充した。
  遺留分特例制度とは、経営者が後継者に生前贈与した自社株について、他の推定相続人(遺留分権利者)全員の合意を得たうえで、以下のどちらかが可能となる制度だ。
  @生前贈与した自社株を遺留分の算定から除外する(除外合意)
  A生前贈与した自社株の評価額を合意時の価額に固定して遺留分の算定に加える(固定合意)
  同制度を利用すれば、経済産業大臣の確認を受けることで、後継者単独で家庭裁判所への許可手続きが可能である。遺留分特例制度が創設される以前は、経営者から後継者へ生前贈与した自社株が他の相続人の遺留分を侵害し、遺産分割で揉めることが多かった。その解決策として遺留分の放棄という方法があるが、これは推定相続人が自ら家裁に申立てて許可を得なければならず、手間がかかり、手続きが進みにくかった。遺留分特例制度の創設によって後継者への自社株集中がしやすくなったのだ。
● 共済金の支給、事業承継も廃業と同額に
  一方、小規模企業共済制度とは、いわば「経営者の退職金制度」で、個人事業者や会社等の役員が、廃業・退職後の生活の安定等を図るための資金として積み立てを行う制度。
  現行制度は、廃業した場合に最も多額の共済金を支給するが、改正後は、個人事業者が親族内で事業承継した場合も、廃業と同様の支給額とする。例えば、月額4万円で20年間納付した場合の支給額は、廃業時は約1,115万円だが、現行約968万円の親族内承継時も同額となる。
  また、小規模企業者の高齢化が進むなか、次世代へのバトンタッチを促すため、65歳以上の会社役員が退任した場合の共済金の支給額を引き上げる。例えば、月額4万円で10年間納付した場合の支給額は、現行では約480万円だが、改正後は約504万円となる。
  さらに、現行制度では、経営の悪化、疾病・負傷等の場合を除き、毎月支払う掛金の額の減額が認められないところ、経営状況に応じた掛金の柔軟化を図る。
参考  : 経済産業省発表資料
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2016.03.28
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