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平成26年分の相続税の申告状況、1年前とほぼ同じ
  昨年末に国税庁から平成26年中の相続・遺贈によって財産を取得した人に係る相続税の申告の状況が発表された。平成27年からは改正相続税法が施行されており、改正前の相続税法下における最後の年の申告状況であり、従来の傾向から大きな変化は見られなかった。
● 課税割合、課税価格および納税額は対前年比でほぼ横ばい
  平成26年中の死亡者数=被相続人数、つまりは相続の発生件数は127万3,004名(件)で前年比ほぼ横ばい(対前年比100.4%)、被相続人のうちで相続税の申告書の提出に係る被相続人数は5万6,239名と対前年比で微増(同103.3%)であった。その結果、課税割合(被相続人数に対する申告書の提出に係る被相続人数の割合)は4.4%(前年は4.3%)とほぼ横ばい傾向となった。
  一方、相続税の納税者である相続人は、その人数が13万3,310名と対前年比で微増(同102.1%)、それに対して課税価格11兆4,766億円は対前年比98.7%と微減ながらも、税額については1兆3,908億円と対前年比90.5%に減少したため、被相続人1人当たりの税額は2,473万円と対前年比87.6%まで落ち込んだ。
  相続税課税の対象となった相続件数の割合、すなわち課税割合は上述のとおり対前年比横ばいで、平成15年以降、26年まで一貫して4.2〜4.4%の範囲内に収まりほとんど変化のない状況であるが、その背景には分母となる被相続人の数、つまり死亡者数が年々増加傾向にあり、それにつれて相続税の納税が発生する相続の被相続人も増加しているという、いわば社会の高齢化進行の現象が見て取れそうである。
● 土地・家屋減少傾向、現金・預貯金は増加傾向
  課税価格(合計額)については、10年前の平成16年に底を打った(10兆円割れ)のちは10兆円台に戻し、しばらくはほぼ横ばい傾向が続き、そして、25年、26年は平成13年以来の11兆円台を回復している。
  内訳を見ると、この20年間で構成に変動が起きていることに注目できる。土地および不動産については相続財産の大きな部分を占めているイメージが強く、事実、平成6年では全体の4分の3を占めていたが、平成26年の相続では46.9%と半分を切っており、相続財産の内訳についての見方を多少変える必要があるかもしれない(もっとも、まだ50%近くを占めており、遺産分割の問題解決に影響することに変わりはないとは考えられる)。
  それに対してここ20年間で着実に金額を増やしているのが「現金・預貯金等」であり、課税価格では平成6年の1兆5,002億円から、26年には3兆3,054億円と倍増以上の伸びを見せている。占率も9.4%から26.6%と3倍近い拡大だ。
  この間、ちょうどデフレ状態で評価性資産の多くが評価額を下げていた中、ポートフォリオの構成を信頼できる資産である現金・預貯金へのシフトや、相続税および遺産分割対策のために相続財産に占める現金・預貯金のウエイトを高めるなどの行動が「現金・預貯金等」の拡大の理由として想像される。
  次回に発表となる平成27年分のデータは、新しい相続税の制度下における最初のものとして大いに注目される。もちろん、課税対象となる相続件数の割合および納税額の増加が見込まれるが、実際の影響がどの程度になるかが興味の対象の一つであり、それに伴い納税対策に対する関心がより高まり、保有財産の状況にあわせた効果的な相続税の納税資金対策の提案が、今後もますます重要になると考えられる。
参照  : 国税庁ホームページ「平成26年分の相続税の申告の状況について」
2016.03.31
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