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年金額が据え置かれたロジック
● 公的年金額の決定のロジックを知っていますか?
  平成28年度の公的年金額は平成27年度から据え置きになります。このことについては、報道等により、ご存知の方も多いと思います。
  ただし、公的年金額の決定のロジックまでご存知の方は必ずしも多くないと思いますので、こういったことをお客さまに説明できると営業力もアップするのではないでしょうか。
  年金額の改定のルールは、現役世代の賃金水準に連動する仕組みとなっており、法律上次のように規定されています。
@年金を受給し始める際の年金額(新規裁定年金)…名目手取り賃金変動率によって改定
A受給中の年金額(既裁定年金)…購買力に着目して物価変動率によって改定
● 年金額改定の各指標の解説
  【平成28年度の年金額改定にかかる各指標】
  ・名目手取り賃金変動率…▲0.2%
  ・物価変動率…0.8%(消費者物価指数による)
  ・マクロ経済スライドのスライド調整率…▲0.7%
  ※「名目手取り賃金変動率」とは、次のような算式から求められます。
名目手取り賃金変動率(▲0.2%)
    =実質賃金変動率(▲0.8%)×物価変動率(0.8%)×可処分所得割合変化率(▲0.2%)
  マクロ経済スライドとは、賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みであり、これは将来の年金の受給者である現役世代の年金水準を確保することにつながるものです。現役被保険者の減少と平均余命の伸びにもとづいて「スライド調整率」が決定され、その分が賃金や物価の変動により算出される改定率から控除されることとなります。「スライド調整率」とは、次のような算式から求められます。
スライド調整率(▲0.7%)
    =公的年金被保険者の変動率(▲0.4%)×平均余命の伸び率(▲0.3%)
● 平成28年度に関しては例外規定が適用!
  ところが、賃金水準がマイナス変動(▲0.2%)で、物価水準がプラス変動(0.8%)の場合は、現役世代の保険料負担能力は低くなっていることになります。この場合、上記の年金額改定のルールを適用せず、例外的に「@新規裁定年金」「A既裁定年金」ともにスライドなしとする規定が存在しており、今回はこれに該当することになりました(この場合、マクロ経済スライドによる調整も適用されません)。
  このようなことから、平成28年度の公的年金額は「改定率」「スライド調整率」も前年度から変わらず、結果として年金額についても据え置きとなりました。新年度価格による年金は、4月分が支払われる6月からとなります。
  なお、平成27年10月施行の被用者年金一元化法(公務員等の共済年金を厚生年金に一元化する法律)により、年金額(年額)の端数処理が100円未満四捨五入から、1円未満四捨五入に改められました。そのことにより、基礎年金・厚生年金ごとに年額50円の範囲の間(月額4円以下)での増減が生じることとなります。
  
木下 直人(きのした・なおひと)
社会保険労務士、CFP、1級DCプランナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、保険コンプライアンス・オフィサー2級
  東京大学農学部卒。保険業界勤務。保険税務や社会保険・ライフプランなどの資材作成・研修講義はわかりやすく、面白いとの定評がある。
  
2016.04.04
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