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粒子線治療の一部が4月から保険適用に
  先進医療とは、「厚生労働省が認めた高度な医療技術について、今後公的医療保険の適用対象とするかどうかについて評価する段階にある医療技術」のことである。先進医療として認められると、その先進医療技術にかかる費用は全額自己負担であるが、それに付随して発生する診察料や検査料、投薬料、入院料などは公的医療保険の適用を受けることができる。
  平成28年3月1日現在、117種類の先進医療技術があり、そのうち14種類の先進医療技術が今年4月から保険適用となる見通しとなった。これは、1月14日に開催された第38回先進医療会議においてまとめられた先進医療技術の保険適用に関する検討結果について、1月20日開催の第323回中央社会保険医療中央協議会総会で報告され了承されたものである。
  なかでも注目すべきは、がんの治療として認知度の高い「陽子線治療」「重粒子線治療」といった粒子線治療について、限定的ではあるが保険適用が認められたことである。陽子線治療は平成13年7月から、重粒子線治療は平成15年11月から、それぞれ限局性固形がんを適応症とした高度先進医療として開始されていたもので、この4月から保険適用となるのは、「小児がん」に対する陽子線治療と、「手術非適応の骨軟部腫瘍」に対する重粒子線治療である。なお、「頭頸部の非扁平上皮がん」や「肝がん」、「肺がん」などについては、保険適用が見送られた。これら見送りとなった部位を含め、大半のがんは今後も先進医療の対象となる。
  粒子線治療に係る費用は、陽子線で約270万円、重粒子線で約309万円であり、3割負担の場合なら100万円以下に費用がおさえられ、経済的な負担が大幅に軽減される。一方、粒子線治療を受けることができる医療施設は現時点でも決して多いとは言えず、陽子線が10施設、重粒子線が5施設にとどまる(3月1日現在)。重篤な状況にある患者の場合、近隣に粒子線治療が受診可能な施設があるとは限らず、費用だけでなく移動の困難さに対処する方法も今後考えなければならないだろう。
平成28年4月保険適用予定の先進医療技術
技術名 件数 1件当たり費用
 
凍結保存同種組織を用いた外科治療
20
万円
82.7
陽子線治療 3,012 268.1
重粒子線治療 1,889 308.6
非生体ドナーから採取された同種骨・靱帯組織の凍結保存 112 26.0
RET遺伝子診断 22 7.7
実物大臓器立体モデルによる手術支援 607 10.6
単純疱疹ウイルス感染症又は水痘帯状疱疹ウイルス感染迅速診断(リアルタイムPCR法) 9 2.0
網膜芽細胞腫の遺伝子診断 7 8.7
有床義歯補綴治療における総合的咬合・咀嚼機能検査 90 0.3
腹腔鏡下仙骨膣固定術 31 30.1
硬膜外自家血注入療法 577 3.6
食道アカラシア等に対する経口内視鏡的筋層切開術 379 15.2
内視鏡下頸部良性腫瘍手術 102 23.6
内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下腎部分切除術 腎がん(長径が7cm以下であって、リンパ節転移及び遠隔転移していないものに限る。) 105 92.7
出典:厚生労働省「第38回先進医療会議(平成27年度(平成26年7月1日〜平成27年6月30日)実績報告)」 をもとに試算
2016.04.07
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