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改正雇用保険法成立、雇用保険料率が引き下げに
● この4月より雇用保険料率が0.8%に下がる
  育児や介護と仕事を両立しやすくする対策を盛り込んだ雇用保険法等の改正法案が3月29日、国会で成立した。今回の改正で影響の大きいものは、雇用保険の保険料率の引き下げで、平成28年4月から雇用保険の料率(失業等給付に係る保険率)が現行の1.0%から0.8%に下がる。
  事業主負担分には雇用保険二事業分も含まれているので、一般の事業の場合、合計で1.1%となる。今回の引き下げは4年ぶりの改正で、年収400万円の従業員は、年間で4,000円負担減となる。
■平成28年4月1日からの雇用保険料率
事業主負担分
(雇用保険二事業分含む)
被保険者(労働者)
負担分
雇用保険料率
一般の事業 7/1000 4/1000 11/1000
農林水産・清酒製造の事業 8/1000 5/1000 13/1000
建設の事業 9/1000 5/1000 14/1000
● 65歳以上で働く人も雇用保険加入へ
  今回の改正で65歳以降に新たに雇用される場合には、労働時間等の要件を満たしていたら雇用保険に加入することになる(平成29年1月1日施行)。
  今までは、65歳になった日以降に新たに働く人は、雇用保険に加入することができなかった。65歳より前から雇用保険に加入していた人だけが、65歳に達した日以後も、同一の事業主に雇用されている場合には、引き続き雇用保険の適用とされていた。今回の改正は、高齢者の雇用を一層促進することにつながるが、65歳以上の高齢者のマネジメントは、難しい部分もあるので迎え入れる企業側の意識の改革も必要であるといえる。
● 介護休業を分割で取得可能に
  その他の改正点としては、介護離職を防止する施策が数多く設けられた。育児・介護休業法の改正によるものだが、介護休業の分割取得が可能になり、対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで介護休業を分割取得することができることとした(平成29年1月1日施行)。
  雇用保険法の改正により、仕事と介護の両立を後押しする制度「介護休業給付金」の給付率を現在の40%から67%へ引き上げた。介護休業は、介護が必要になった親族1人につき最大93日まで取得できることになっており、今回の改正で育児休業給付(最初の6か月)と同じ水準まで引き上げた(平成28年8月1日施行)。
  介護休業を分割取得が可能になったとしても、93日だけでは介護離職を防止することにはならないという声も聞こえてきている。実際に生命保険文化センターが行った調査(「生命保険に関する全国実態調査」平成27年度)では、介護を行った期間は平均59.1カ月(4年11カ月)とのこと。長期にわたって介護をしている人に対しては、今回の改正は一歩前進したとはいえ、まだまだたくさんの問題があることには違いない。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2016.04.11
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