>  今週のトピックス >  No.3193
厚労省、違法残業の事業場への監督指導を徹底
● 対象の半数以上で違法な時間外労働を確認
  近頃では企業業績が回復してきているという話題をよく耳にしますが、その一方で労働者の「長時間労働」の問題は依然解消されていません。働きざかりの年代に長時間労働が目立ち、有給休暇の取得率も低迷が続いています。度重なる残業や休日出勤、休息をとらないままの連続出勤の結果、抑うつ状態に陥り、心理的ストレスを訴える人も増えています。企業にとっても労働者のモチベーションのダウンや残業代の負担増加など業績に悪影響を与えるだけでなく、労働者とその家族の生活の崩壊にもつながりかねないなど、見過ごせない状況となってきています。
  今週のトピックスNo.3189でも紹介されていましたが、厚生労働省では近年、長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導を強化しています。その一環として、労働基準監督署が平成27年4月〜12月の期間に、1か月当たり100時間を超える残業が行われた疑いのある事業場、長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場の計8,530事業場を対象として実施した監督指導の結果を、4月1日に公表しています。
  対象事業場の半数以上にあたる4,790事業場で違法な時間外労働が確認され(このうち月100時間超の残業が認められたのは2,860事業場)、是正・改善に向けた指導が行われました。なお、過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善の指導が行われた事業場は、6,971事業場もありました。
● 対象の3分の1で月100時間超の時間外・休日労働を確認
  月100時間超の残業が認められた2,860事業場における時間外・休日労働の最長者の時間数を確認したところ、100時間超〜150時間以下は2,265事業場、150時間超〜200時間以下は475事業場、200時間超〜250時間以下は93事業場、250時間超は27事業場もありました。
  一般的な目安としては、週休2日の企業で1日8時間労働、1か月に21日勤務した場合、168時間が1か月の労働時間になります。それに加えて時間外・休日労働が100時間を超えたら大変ですが、これが250時間超もあったとしたらどれほど過酷な状況でしょう。
  厚生労働省では、今後も月100時間を超える残業が疑われる事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、過重労働の解消に向けた取組を積極的に行っていくとしています。これまでは主に労働基準監督署などに相談が寄せられた事業場を調査対象にしていましたが、現在では求人系口コミサイト、掲示板サイト、SNS、ブログなどインターネット上で「ブラック企業」などと呼ばれている企業の情報を集め、立ち入り調査に生かしているそうです。
参照  : 厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します」
  
  
半田 美波(はんだ・みなみ)
社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。
  
  
2016.04.25
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