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国税庁、「消費税の軽減税率制度に関する事例集」を公表
● 「飲食料品」の譲渡の範囲等や外食の範囲など全75項目を掲載
  平成28年度税制改正において来年4月の消費税率引上げ時に消費税の軽減税率制度が導入されることになったが、国税庁は4月12日、消費者や事業者が軽減税率の対象になるかどうかを判断するための参考となる事例集「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」を公表した。
  事例集には、「飲食料品」の譲渡の範囲等、飲食料品の輸入取引、外食の範囲、「一体資産」の適用税率の判定、「新聞の譲渡」の範囲等、区分記載請求書等の記載方法等について、全75項目がQ&A形式で掲載されている。
  軽減税率制度では、客の自宅やホテルに出向いて調理や給仕を伴うケータリング・出張料理などのような「譲渡の相手方が指定した場所において行う加熱、調理又は給仕等の役務を伴う飲食料品の提供」は外食に当たるため、軽減税率の対象から除外される。ただし、「有料老人ホームその他の人が生活を営む場所として政令で定める施設」での飲食料品の提供は除かれ、外食の対象外として軽減税率が適用される。
  これらの施設としては、有料老人ホーム(入居者が、60歳以上の者、介護保険法の要介護認定又は要支援認定を受けている60歳未満の者、前記のいずれかに該当する者と同居している配偶者、のいずれかに該当する者)のほか、(1)サービス付き高齢者向け住宅、(2)義務教育諸学校の施設、(3)夜間課程を置く高等学校の施設、(4)特別支援学校の幼稚部又は高等部の施設、(5)幼稚園の施設、(6)特別支援学校に設置される寄宿舎、などがある。
● 老人ホームの食事は640円以下なら軽減税率の対象
  事例集では、外食の範囲の中で「有料老人ホームの飲食料品の提供」を掲載し、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅での食事は、原則として軽減税率の対象だが、同一の日に同一の者に対して提供する食事の対価の額(税抜き)が1食当たり640円以下で、1日の合計の食事代が1920円までが軽減税率の対象となることを明らかにしている。これは、小中学校や夜間高等学校などの食事も同様となる。
  一方で、学生食堂や社員食堂の食事は軽減税率の対象とはならない。事例集によると、軽減税率の適用対象となる「学校給食」とは、その学校の児童や生徒の全てに対して学校給食として行う飲食料品の提供をいうので、利用が選択できる学生食堂での食事はこれに該当しない。また、学生食堂での飲食料品の提供は、飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供に該当するので、軽減税率の適用対象とならない、と説明している。
● 消費税軽減税率制度に関する取扱通達を公表
  また同日国税庁は、消費税の軽減税率制度に関する法令解釈通達「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について」(課軽2−1ほか)を公表した。通達は、軽減税率の対象となる「飲食料品」及び対象外である「外食」の意義、対象資産を譲渡した場合の請求書等の記載事項などについての取扱いが明示されている。
  主なものをみると、軽減税率が適用される「食品」とは、人の飲用や食用に供されるものが対象となるから、工業用の塩や観賞用・栽培用として取引される植物及びその種子は、食べることはできても人の飲用や食用以外の用途で販売されるものは該当しないとした上で、注書きで「飲食用として購入した食品を、購入者が飲食以外の目的で使うとしても、その食品の譲渡は、『飲食料品の譲渡』に該当する」と明記している。
  そのほか、軽減税率が適用されない飲食店業を営む者が行う食事の提供(いわゆる「外食」)とは、事業者がテーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備のある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供であることと定義した上で、レストラン、喫茶店、食堂、フードコート等での飲食料品の提供のほか、飲食目的以外の施設等であっても、外食に該当する場合があると説明している。
参考  : 消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)
法令解釈通達「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について」
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2016.04.25
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