> 今週のトピックス > No.3196 |
![]() |
昨年10月施行の医療事故調査制度に注目 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() |
||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
![]() ● 医療事故調査制度〜発足の経緯
平成26年6月に医療法が改正され、「医療事故調査制度」が誕生、昨年10月1日より施行されている。そもそものきっかけは、今から17年前の平成11年に3つの重大な医療事故(患者取り違え事故など)が相次いで発生したことにある。これを受けて厚労省および医療界において、医療の安全確保と再発防止に向けたさまざまな議論が行われてきた。そして、平成25年3月に厚労省の「医療事故にかかる調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」の取りまとめをふまえ、今回の制度がスタートしたという流れになっている。
この新制度のポイントとしては、まず「医療事故調査」の流れを明確にしたことにある。まず、患者の死亡事例が発生した場合、支援団体(医療事故調査・支援センターなど)の協力なども得ながら「医療事故であるか否かの判断」を行う。そのうえで、@遺族に対して厚労省令で定める事項(医療事故の状況や院内事故調査の実施内容など)を説明し、A医療事故調査・支援センター(以下センター)へ報告しなければならない。その後に、厚労省が示している項目や留意事項にもとづいての院内調査を進めることが義務づけられた。同時に、医療機関または遺族からの依頼があった場合には、センターによる調査も同時並行で行われることもある。 ![]() ● 調査における留意点とは?
注目したいのは、先の院内調査における留意事項だ。まず、本制度の目的は「医療安全の確保」であることがうたわれ、「(現場の医師・看護師などの)個人の責任を追及するものではない」ことが強調されている。そのうえで、「調査の対象として当該医療従事者等を除外しない」としつつ、「調査の過程において可能な限り匿名性の確保に配慮すること」となっている。つまり、今回の制度に「医療従事者個人の責任追及」という要素が入ってしまった場合、それは現場の萎縮を生み、その後の再発防止という制度の趣旨にそぐわなくなる点に最大の注意が払われているといえる。
では、仮に親族が医療事故で亡くなった場合、今回の制度に関して遺族として心得ておきたいことは何か。まず、院内およびセンターによる医療事故調査が行われた場合、その結果は(先の医療事故判断に至った段階での説明に加えて)遺族に説明が行われる。その際に、医療法第6条の11第5項にもとづき、「結果報告の内容について遺族から意見があった場合は、その内容も報告書に記載していくことが必要」(厚労省HPより)としている。つまり、遺族側も意見聴取という形で報告書の取りまとめに加わることができるわけだ。 さて、気になるのは、この医療事故調査の報告書がその後の刑事・民事訴訟に使われることがないのかという点だろう。この点について厚労省のHPで確認すると、「報告書を訴訟に使用することについて、刑事訴訟法、民事訴訟法上の規定を制限することはできない」としている。一方で、「医療事故調査の実施に当たっては、本制度の目的を踏まえ、事故原因を個人の医療従事者に帰するのではなく、医療事故が発生した構造的な原因に着目した調査を行い、報告書を作成していただきたい」という具合に、全体としてやや歯切れが悪い。 果たしてこの新制度が、重大な医療事故の防止に向けた特効薬となるのかどうか。また、患者の医療への信頼醸成を高めることにつながるのか。今後の各種医療機関における取り組み事例などに注目をしていきたい。 ![]()
![]()
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
2016.04.28 |
![]() |
|