>  今週のトピックス >  No.3202
ジュニアNISAの運用始まる
● 制度が複雑なジュニアNISA
  平成28年1月から口座開設の申込みが始まった「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」。4月から実際の運用(商品の購入)が可能となりました。
  日本証券業協会の稲野会長は4月の定例記者会見で、「出足は極めて鈍い」、「4月月間の口座開設数は10万口座には満たないのではないか」との見解を述べています。その要因として、成人向けNISA(以下NISA)に比べて制度が複雑であること、申込み手続きに際して必要な書類が多いことなどを挙げています。
  制度を複雑にしているのは、ジュニアNISAでは原則18歳になるまで資金の引き出しができず、それ以前に運用商品を売却する場合や、5年間の非課税期間終了後にロールオーバー(翌年の非課税枠に商品を移すこと)を行う際の利用者の年齢などにより、投資した資金の置き場所が変わる点でしょう。
● 株式の売却代金や分配金等は、「課税ジュニアNISA口座」で管理
  「ジュニアNISA口座(非課税口座)」の開設と同時に、「課税ジュニアNISA口座(払出し制限付き課税口座)」も開設します。
  そして、非課税口座であるジュニアNISA口座で保有する上場株式等を売却した代金や分配金・配当金、また、ロールオーバーを行わなかった上場株式等は、課税ジュニアNISA口座で管理されます。払出し制限期間内に払出しを行うと、全部解約(ジュニアNISA口座の廃止)となり、それまで非課税で受領したすべての配当金や売買益等については払出し時に課税されることになります。
  課税ジュニアNISA口座にプールされた資金は18歳まで引き出しできないものの、翌年以降に設定される非課税枠での投資に使うことができ、また、課税にはなりますが、株式や株式投資信託だけでなく、公社債や公社債投資信託など、より幅広い商品の購入にあてることもできます。
● 20歳まで非課税運用を可能にする「継続管理勘定」
  ジュニアNISA口座の開設期間はNISAと同じく平成35年までとなっていますが、ジュニアNISAは長期にわたる資産形成のための制度なので、平成36年以降もロールオーバー専用の「継続管理勘定」が設定され、20歳になるまで非課税運用が継続できる仕組みになっています。
  例えば、平成28年に誕生した子どもが毎年80万円ずつ投資をしていき、非課税期間終了時にロールオーバーを行い続ける場合、口座開設期間の平成35年を過ぎても平成40年までは「継続管理勘定」が設けられていきます。継続管理勘定では、新たな買付けはできませんが、移管した分は非課税で運用を続けることができます。
  一方、現時点で17歳の子供が5年の非課税期間終了後にロールオーバーする場合、その時点で20歳を過ぎているので、自動的にNISA口座が開設され、上限金額である120万円の範囲内で移管されることになります。
  仕組みのわかりにくさや口座開設手続の煩雑さなどの難点はありますが、毎年80万円の投資枠を非課税期間の5年間フルに活用すれば、最大400万円の資金を20歳まで非課税で運用できるメリットは大きいでしょう。
  運用に不安がある場合には、受取金額が確定している学資保険などと併用することで、心理的な負担は軽減されるのではないでしょうか。
  今後、認知度が高まり、メリットが理解されていけば、口座開設が一段と進むことが予想されます。
※3月31日時点で18歳である年の前年の12月31日まで。
  
松木 千賀子(まつき・ちかこ)
FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
静岡県出身。外資系石油会社の企画分析部門にて主にアナリストとして従事した後、個人のライフプランニングに興味を持ちCFP資格を取得。2003年よりFPアソシエイツ&コンサルティング株式会社にて、多くのリタイアメント層の顧客の担当として、投資信託の分析やポートフォリオ作成を行う。また、マネー誌やメルマガなどへの寄稿、金融機関社員向け研修や確定拠出年金制度導入企業の社員向け説明会の講師等の活動にも携わる。
  
2016.05.16
前のページにもどる
ページトップへ