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パナマ文書から考えるタックス・ヘイブンとは
  世界中で話題となったパナマ文書。これは、パナマにある法律事務所で取り扱ったタックス・ヘイブンを利用した取引の内容を記録した文書のことです。このデータをドイツの新聞社が入手し、データの内容がマスコミに広がったことにより、世界各地で税制優遇を受ける行動に問題があるのでないのか? と問題視されたことが騒動の発端です。
  では、その元となっているタックス・ヘイブンと何なのでしょうか?
● タックス・ヘイブンとは「租税回避地」のこと
  タックス・ヘイブンとは、低い税率もしくは無税にして企業や富裕層をその国や地域に誘致している地域のことをいいます。「オフショア金融センター」などとも言われています。
  主なタックス・ヘイブンは、ケイマン諸島、ドミニカ共和国、モナコ、マン島等。
  オフショア金融センターとしては、スイス、ルクセンブルク、シンガポール等。
  いずれもOECD(経済協力開発機構)から発表されています。
  これらの国や地域は決して法律的に問題があることを導入しているのではなく、問題は利用する側にあるとみられているのです。
● 資産を海外に移せば税金は支払わなくて良い?
  日本にある会社の場合、法人税は日本で支払うことになります。しかしながら、会社がタックス・ヘイブン地域にある場合には、その収入は会社のある地域の法律に従って納税するケースが一般的です。つまり、タックス・ヘイブン地域にある会社が得た収入であれば、低い税率もしくは無税となることを意味するのです。たとえオーナーが日本人であっても、です。そうなると、日本国内での法人税収は得られないことになるのです。
  これは日本だけでなく先進国の多くが同じ悩みを抱えており、海外ではパナマ文書に記載されていたことが知られた政治家が辞任に追い込まれるといった事態に至っています。そしてこのパナマ文書問題は、海外から飛び火し、日本でも問題視されるようになりました。
● 日本に住む人はどこで得た収入でも課税対象に
  ここで問題となるのは利用者側の意識。たとえば、日本の法律では日本に居住している人の場合、国内外問わず、株式等を売却して得た利益は、いずれの国で得た収入であっても日本で課税されるというルールがあるのです。
  日本はもとより先進国の多くでは、タックス・ヘイブン対策税制と呼ばれる、軽課税の外国子会社等を利用した国際的租税回避に対処することを目的とした税制が設けられています。また、日本に居住する人が海外において株式等を売却したことによって得られた譲渡益については、国内で売却した場合と同様に課税されます。最近では、平成27年7月1日以降に国外に転出、つまり国内に住所や居所を持たなくなるような場合でも、一定の要件に該当する者が1億円以上の対象資産を所有しているような場合には、その対象資産の含み益に所得税などが課税されることになっています。
  つまり、いくらタックス・ヘイブンで収入を得たからといっても国内での納税をすべて免れられる、という訳でもないのです。
  そのため、正当な資産運用の目的で国外での投資を行うのであれば、海外での低い税率を享受しつつ、日本でも決められたルールに従って納税するというように法律を遵守することが大切になります。
  
飯田 道子(いいだ・みちこ)
海外生活ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナー(CFP)
  金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっている。主な著書には、「宅建資格を取る前に読む本」(総合資格)、「介護経験FPが語る介護のマネー&アドバイスの本」(近代セールス社)などがある。
  海外への移住や金融、社会福祉制度の取材も行う。得意なエリアは、カナダ、韓国など。
  
2016.05.30
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