>  今週のトピックス >  No.3213
「無期転換ルール」を知っている契約社員は3人に1人
● 事業所の9割は知っているのに、契約社員の認知度は低い
  労働契約法の「無期転換ルール」に基づく無期転換申込みが、2年後の平成30年度から本格的に行われる。無期転換ルールとは、平成25年4月1日以降に開始または更新した有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合に、労働者から申込みがあれば期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換するルールのことをいう(労働契約法18条)。
  無期転換ルールへの対応には企業間で温度差があって、就業規則の見直しや規定の整備に取り組んでいる企業がある一方で、対象となる人数が多いにもかかわらずまだ何も検討していない企業もけっこうあるようだ。実際にどのあたりが問題なのか認識していない方も多いようなので、今回は契約社員に関する実態を把握するととともに無期転換ルールへの企業側の対応方法についても確認したいと思う。
  そこで注目したいのが、東京都産業労働局が3月に発表した「平成27年度  契約社員に関する実態調査」だ。無期転換ルールについて知っているか、事業所、契約社員それぞれに尋ねたところ、事業所の90.8%に対して契約社員は35.5%、およそ3人に1人しか認知されていなかった。このように、無期転換ルールの認知度は事業所と契約社員で乖離していることが明らかとなったわけだが、このような状況では、労使トラブルの要因にもなりかねないことから、今後は企業が契約社員の意向もふまえたうえで対応していくことが重要になるのはいうまでもない。
● 無期転換ルールへの企業の対応は、4割が「現在検討中」
  事業所に無期転換ルールへの対応予定について尋ねたところは、「現在検討中」が42.2%でトップだった。具体的な対応内容としては、「今後も有期労働契約で雇用し、通算5年を超える契約社員から申し込みがあれば無期契約に転換する」(40.0%)、「更新回数や勤続年数に上限を設置し、通算勤続年数が5 年以内となるようにする」(9.7%)、「今後も有期労働契約で雇用し、通算5年を超える前に無期契約に転換する」(8.1%)という順であった。
  無期転換する場合の雇用形態については、「有期労働契約時と同一の労働条件で、契約期間のみ無期契約とする」が51.4%で最も多く、以下、「既存の正社員区分に転換する」(30.7%)、「現在検討中」(25.1%)と続いている。
  一方、契約社員はどう考えているのだろうか。その隠れた本音も含めた実態をつかむことも大切である。契約社員に無期転換ルールの利用希望を尋ねたところ、「条件によっては利用したい」(41.7%)と「利用したい」(19.0%)を合わせると希望者は6割を超えていた。
  なお、調査の中で興味深い項目として、契約社員に「契約社員の仕事を選んだ理由」を問うと、「正社員として働ける適当な企業がなかったから」が28.0%で最も多く、以下、「やりたい仕事だったから」(25.2%)、「専門的な技術や資格が生かせるから」(23.2%)、「自分の都合(勤務日・時間等)にあわせて働けるから」(18.5%)と続いている(2つまで回答可)。自ら進んで契約社員という働き方を選んだ人はそれほど多くないようだ。
  このような契約社員の実態は大変参考になるところであり、自社の置かれた状況をよく考えたうえで、無期転換ルールへの対応のスタンスを早めに発表しておくことが契約社員への配慮の点からも望ましいといえる。
参照  : 東京都産業労働局「平成27年度  契約社員に関する実態調査」
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2016.06.06
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