> 今週のトピックス > No.3216 |
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改正保険業法(5月29日施行)を考える | ||||||||
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業界では、保険募集に際する「意向把握・確認義務」や「情報提供義務」の履行及び保険会社から募集人にも適用された「体制整備義務」の遵守に関し、その具体的な実務指導に注力されているところではないだろうか。その中で重要な部分を見過ごすことがないように、この改正法の性格を再確認しておくことも必要かと思われる。
![]() ● 改正法施行の経緯と背景となった課題とは
法改正の出発点は、基本問題※1への対応を継承した金融審議会の「保険商品・サービス提供のあり方に関するワーキンググループ(以下WG)」による検討結果であり、その視点は自由化・多様化・国際化・規制緩和・競争力強化等への対応となる広範なものであった。
近年は金融商品・サービスの多様化・複雑化とともに、過去の金融危機を経て金融システムが整備され、販売・流通市場も変化してきた。保険業界にあっても契約手続き等の形骸化懸念(簡素化も課題) 、販売形態の多様化(乗合代理店・店頭販売・保険仲立人・業務委託・非対面販売・比較情報サイトの展開)など、従来の法規制だけでは合理的な指導に無理が生じるケース(グレーゾーン)も多くなった現状がある。また、国内市場の限界から、自らの海外進出・買収そして海外機関の受け入れ等、本格的な国際化時代の到来と同時に対応チャネルの活性化が必要となったことも挙げられる。
![]() ● 保険募集に係る改正法の特徴
この改正法の大きな特徴は、一般的義務規定(プリンシプル※2)としてルールの限界を補足し、達すべき結果に対して各社の自由度を尊重の上、より積極的・効果的な行動を促進して運用の充実を求めると同時に、国際競争力の養成を意識している点にある。
従来規定の禁止行為との併用法規として金融庁ではそのベストミックスを掲げる。不説明が禁止行為となる重要な事項の他、曖昧な募集行為もトラブル防止のために明文化されたが、把握すべき意向や提供情報の内容については、目的達成のために必要な幅広い対象となるため画一的に規定されず適合性の原則の影響も受けるものとなる。従って従来感覚の法令理解では釈然としない。そこで監督指針等にその実務の標準的プロセス事例を示すことにより、これまでの販売手順の質的な革新を図っている。 加えて募集人に対する体制整備義務では、法令遵守について自身の募集業務に対する一定の管理責任を負うことを明確にして、募集人の地位向上にも繋げている。
![]() ● 今後の保険行政の方向性 (継続検討事項等)
改正法のベースとなった平成25年の金融審議会報告により実現した保険募集以外の法的措置では、現行法内での柔軟な対応も含め、子会社での老人福祉施設や保育所の運営、直接支払サービス※3や不妊治療に係る保険商品の取り扱い等を可能としている。保険会社の資金力活用による社会保障補完に向けた今後のサービス機能充実も期待され、現物給付保険や巨大リスク対応(共同保険)等、生損保ともに新分野の商品・制度の取り扱いは実務的検証のもと継続検討となった。
次は、これらの法改正の効果を見極めながら、WG検討でも触れた国際競争激化の中の募集コスト(手数料)問題や更なる募集人資質向上、保険会社の募集人に対する損害賠償求償権、リスクコンサル業務化する保険仲立人の規制追加緩和等、国際的基準への適合を念頭に置いたハイレベルな課題の解決に向かっていくのではないだろうか。
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2016.06.09 |
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