>  今週のトピックス >  No.3218
「若年者納付猶予制度」の対象が拡大した!
● 経済的に難しいときの保険料免除・納付猶予の制度
  「下流老人」や「老後破産」などの高齢者の経済的苦境を表した本が売れています。どちらも厳しい実情を詳細にルポした本で、高齢者の経済格差が広がっているのが垣間見えます。
  しかしながら、いずれの本でも経済的に苦境に陥っているのは主に自営業者などの国民年金のみの加入者であり、厚生年金加入者の傷は比較的浅いかもと思わせられます。
  ということは、国民年金加入者の第1号被保険者は公的年金なんて信じられない!」などと言って国民年金保険料を納付しないと、老齢年金が少額となり将来的に苦境に陥る可能性があると考えられます。
  そこで、保険者たる国側が考えたのが、収入の減少や失業等により保険料を納めることが難しいときのための保険料免除制度や保険料猶予制度です。
● 保険料免除・納付猶予制度はうまく活用を!
  国民年金保険料を未納のままにしておくと、将来的に老齢基礎年金を受けられないことがあるほか、障害や死亡といった不測の事態が発生したときに、障害基礎年金・遺族基礎年金が受けられないことがあります。
  保険料免除の場合、受給資格期間へ算入されるとともに、免除された部分の2分の1相当の保険料の納付があったとされ、将来の老齢基礎年金に反映されるほか、障害基礎年金・遺族基礎年金を受け取ることができます。
  一方、若年者納付猶予・学生納付特例制度の場合は、受給資格期間へ算入されますが、老齢基礎年金額への反映はありません。また、障害基礎年金・遺族基礎年金は受け取ることができます。
  いずれの場合も、受給資格期間は現在のところ、原則として25年以上必要です。
  このうち、若年者納付猶予制度の対象年齢が、平成28年7月1日以降「30歳未満」から「50歳未満」へと拡大されます。
● 「50歳未満」まで拡大して老齢年金受給に間に合うのか、という疑問?
  若年者という名称にもかかわらず、「50歳未満」に拡大されたのは、そのような年齢層までフリーターやニートが増加している現状を反映したものです。保険料免除・納付猶予制度は、いずれも10年間の追納制度があり、将来的に所得が増加したときなどに追納することにより、老齢年金額に反映することができます。
  とはいえ、50歳未満ということは、ややもすると受給資格期間への算入は最低で10年まで短くなる場合があることを意味します。
  実は、平成29年4月から受給資格期間は、現在の25年以上から「10年以上」に短縮される予定です(消費増税に連動する予定です)。
  国は、このような制度を用意しているのです。知識は武器です。知識はうまく活用して、将来的な年金受給につなげていきましょう。
  
木下 直人(きのした・なおひと)
社会保険労務士、CFP、1級DCプランナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、保険コンプライアンス・オフィサー2級
  東京大学農学部卒。保険業界勤務。保険税務や社会保険・ライフプランなどの資材作成・研修講義はわかりやすく、面白いとの定評がある。
  
2016.06.13
前のページにもどる
ページトップへ