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労働紛争の相談内容、いじめ・嫌がらせが4年連続トップ
● 総合労働相談件数、8年連続で100万件超え
  厚生労働省は、6月8日、「平成27年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表した。「個別労働紛争解決制度」とは、労働者と事業主との間で起こる、労働条件や職場環境などをめぐるトラブルについて未然に防止したり早期解決の支援をするもので、以下の3つの方法がある。
総合労働相談 都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物などに、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応(全国381か所)。
労働局長による助言・指導 民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度。
紛争調整委員会によるあっせん 紛争当事者の間に、弁護士や大学教授など労働問題の専門家である紛争調整委員が入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度。
  平成13年10月に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行されて以来、同制度は多くの人々に利用されてきており、重要な役割を果たしてきたといえる。
  今回の調査結果によると、平成27年度は、前年度より総合労働相談の件数は微増だったが、助言・指導申出とあっせん申請の件数は減少している。ただし、総合労働相談の件数は8年連続で100万件を超え、高止まりしている。
  また、総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が6万6,566件と、4年連続で最多となった。
● パワハラ対策は、トップの方針を明確にすることが重要
  平成27年度の民事上の個別労働紛争相談の内訳を見てみると、トップの「いじめ・嫌がらせ」が22.4%を占め、次いで「解雇」3万7,787件(12.7%)、「自己都合退職」3万7,648件(12.7%)の順となっている。顕著なのは、「いじめ・嫌がらせ」の件数が年々増加傾向にあることだ。参考までに過去と比較してみると、平成14年度の「いじめ・嫌がらせ」件数は約6,600件だったので、平成27年度はじつに10倍になっているのだ。
  なお、民事上の個別労働紛争の相談だけでなく、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の内訳においても、「いじめ・嫌がらせ」がトップとなっている。このことから今後も増加傾向は続くと思われるが、会社側も大きな労務トラブルにならないようさまざまな対策をしなければならない。
  「いじめ・嫌がらせ」が増加する背景としては、コミュニケーションの希薄化、企業間・労働者間競争の激化、職場内の問題解決機能の低下などの環境的要因と、マネジメントスキルの低下、価値観の多様化などの個人的要因の双方が指摘されているが、今後、さまざまな働き方をする人が同じ職場で働くことが増えれば、さらに増加するものと思われる。
  企業側もパワーハラスメント対策には力をいれているところもあるが、まだまだ十分とはいえない。「パワーハラスメントは一切なくす」という方針を経営者が明確に打ち出し、教育と研修に力を入れていくのが基本的な対策となる。
参照  : 厚生労働省「平成27年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2016.06.20
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