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在宅勤務制度を導入する際の注意点
● トヨタ自動車は総合職も在宅勤務の対象に
  「テレワーク」という言葉を聞く機会が徐々にだが増えてきている。テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことである。安倍政権もこれまでテレワークを推進してきているが、まだまだ定着しているとはいえない状況である。
  テレワークは、働く場所によって、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、モバイルワーク、施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)の3つに分けることができる。
  テレワークの一形態である「在宅勤務」は、トヨタ自動車が最近、在宅勤務制度の対象範囲を広げ、総合職にも適用する方向で動いているという報道の影響から、今後、追随する企業が出てくることが予測される。そんな中で今回は、在宅勤務制度を導入する際の注意点についてポイントだけまとめておく。
● 在宅勤務規程を作成するのがベスト
  政府は、在宅勤務制度を推奨しており、2020年までに、週1日以上終日在宅で就業する人の数を全労働者の10%以上にしたい意向である。企業側も在宅勤務制度を検討したいところであるが導入するのは決して簡単ではない。あくまで雇用関係はそのままで就業場所が変わるわけだが、法律面だけでなくマネジメント関連など理解しておかなければならないことは意外と多い。
  在宅勤務制度の導入に当たっては、労使で認識に食い違いのないよう、あらかじめ導入の目的、対象となる業務、労働者の範囲、在宅勤務の頻度、在宅勤務の方法などについて、労使間で十分に納得いくまで協議することが望まれる。また、在宅勤務制度を導入した際に、実際に在宅勤務をするかどうかは本人の意思によるものとしたほうがよい。
  基本的には詳細にわたるルールについて在宅勤務規程を作成しておくのが望ましく、そこに在宅勤務に必要な通信費や情報通信機器などの費用負担についても規定しておくとトラブルを回避することができる。
● 労働時間管理をどうするかが鍵となる
  使用者側は、労働時間管理をどのようにするかが一番の課題である。在宅勤務であっても原則としては通常の従業員と同じような所定労働時間で働いてもらうのが基本となる。労働時間の把握に関しては使用者側の義務となっているので、始業・終業の時刻、休憩時間、時間外労働についても正確に報告してもらい、会社側で適正に管理する必要がある。
  ただ実際には、働いている姿が見えないので、上司は不安に思うことも多いし、また仕事の進捗状況や内容に関する細やかなマネジメントは難しいところであり、工夫が必要である。WEBカメラなどを活用することによって、オフィスと社員の自宅とを回線でつないでモニター越しに顔を合わせて相談できる環境を構築することも考えたいところである。
  在宅勤務制度を利用する従業員の人事評価も難しいといわれているが、このあたりは会社全体でケアしていかなければならないところであり、評価者の研修なども大事である。
  在宅勤務を利用すると労働時間が長くなり、仕事とプライベートの境目がなくなり、体調を崩したりするケースも多いといわれているので、健康面や精神面も含めて会社及び上司のマネジメント能力が大きく問われるところである。在宅勤務制度も上手に運用できれば、労使ともにメリットがたくさんあるのでこれを機会に導入を検討してみてはいかがだろうか。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2016.07.04
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