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改めて考える130万円と103万円の壁
  パート労働をしている方(主に女性)からの質問で、いくら以上の収入があると税金がかかるのか、健康保険の被扶養者から抜けてしまうのか等の内容は非常に多いです。いわゆる「パートの壁」といわれ、「103万円の壁」と「130万円の壁」の2つがあるのですが、今回は、この壁について詳しく見ていきたいと思います。
● 「103万円の壁」=パート労働の非課税限度額について
  先ず「103万円の壁」ですが、これは税金の壁です。
  所得税(国税)については、給与所得控除の65万円と基礎控除の38万円の合計額までは税金を掛けないことになっており、この103万円を超えると超えた分(課税所得)に対して、5.105%の所得税を払うことになります。
  一方、住民税(地方税)には別の基準があります。「均等割」と所得に応じてかかる「所得割」の両方を合わせて住民税なのですが、それぞれの基準は以下のとおりです。
   *所得割: 給与収入で100万円以下は非課税。
課税所得に対して10%(都道府県民税が4%・市区町村民税が6%)
   *均等割: 給与収入で93万円・96万5千円・100万円以下(自治体により違います)は非課税。
所得に関係なく5,000円(都道府県民税が1,500円・市区町村民税が3,500円)
ここで言う「給与収入」は「源泉徴収票」の「支払金額」のこと(社会保険料を控除する前の金額です)。
お住まいの市区町村がどの基準に当てはまるのかは直接市区町村にてご確認下さい。
● 配偶者控除等について
  次に、税法によって妻に認められている「配偶者控除」の適用条件は、妻の所得が38万円以下となっています。よって、65万円の給与所得控除を加えると、103万円になり、103万円以内のパート収入であれば、夫の税申告の際に配偶者控除の適用も受けられることになります。
  さらに、夫の給与に配偶者控除の適用者がいる場合には家族手当として5千円〜2万円程度(会社の就業規則等による)を支給しているケースは多いですから、この手当がなくならないように就業調整をしている実態もあります。
● 「130万円の壁」=健康保険の被扶養者になる収入限度額について
  そして、健康保険の被扶養者及び国民年金の第3号被保険者については、年収が130万円未満(健康保険加入者の1/2未満であること)となっていますので、上記の税金の基準と間違わないことが大切です。
  年収が130万円以上になると、医療保険は国民健康保険に加入をし、年金は国民年金の第1号被保険者になり、両方の保険料を払うことになります。
  国民健康保険料(税)については、市区町村により保険料(税)額は異なりますが、東京23区の場合では、「均等割額」と「所得割額」を払います。
☆年間保険料は、(1)と(2)と(3)の合計です。
(1)医療分 (2)支援金分 (3)介護分
均等
割額
35,400円
×世帯の加入者数
10,800円
×世帯の加入者数
14,700円
×世帯の加入者のうち40〜64歳の加入者数
所得
割額
世帯の加入者全員の算定基礎額×6.86% 世帯の加入者全員の算定基礎額×2.02% 世帯の加入者のうち40〜64歳の算定基礎額×1.43%(新宿区の場合)
算定基礎額とは、総所得金額等から基礎控除額33万円を差し引いた金額です。
介護分の1.43%は新宿区の場合で、区ごとに異なります。
お住まいの市区町村の国民健康保険料(税)については、お住まいの市区町村で確認してください。
  また、国民年金については、1カ月16,260円の国民年金保険料を払います。よって、合計をするとかなりの負担が増えることになります。
● 今後はどうなるか
  今年の10月からは、短時間労働者への社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大が実施されることになっており、「130万円の壁」が「106万円(月額8.8万円)」に下がります。
  ただし、その他の条件として、1週間の所定労働時間が20時間以上で、雇用期間が1年以上の見込みがあり、501人以上の会社で働く人が対象となりますので、約25万人程度の見込みです。同じ条件で働いても501人未満の会社に勤める人は対象になっていないのが問題ですが、早期に企業規模の条件等の変更が必要なのではないかと、思います。
  それでも、手取り額が減ることを嫌い、年収を抑えるために労働時間を調整するパートの女性は少なくないので、パートに労働力を頼る企業では人手不足が深刻化する恐れがあるとも指摘されています。
  他にも女性の勤労意欲を阻んでいる、専業主婦世帯を優遇した配偶者控除の見直しなどは進んでおらず、政府はより抜本的な改革を求められる可能性が今後はあるものと思われます。
  
三宅 明彦 (みやけ・あきひこ)
特定社会保険労務士。金融機関等での豊富な年金相談経験を持つ。多数の年金セミナー・年金研修等の講師を務める。現在、東京都社会保険労務士会の年金講座講師。著書多数。近著は『平成28年度版年金マニュアルシート』(社会保険研究所)、7月20日に『被用者年金一元化で変わった年金相談・年金実務問答集』(日本法令)発売。
  
2016.07.21
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