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厚労省で「全国在宅医療会議」がスタート
● 第1回全国在宅医療会議の概要
  地域包括ケアシステムの構築に向けて、大きなカギとなるのが在宅医療である。病床改革によって「入院から在宅復帰」までの期間が短縮される中、在宅における重い療養ニーズや看取りへの対応など、在宅医療が担うべき課題は多い。在宅が中心となる場合、医療と介護の連携も重要なテーマとなる。それら多様な改革をいかに進めていくかについて、総合的に検討する場が設けられた。それが厚労省の主催する「全国在宅医療会議」である。
  第1回会合は7月6日に開催されたが、会議の構成メンバーを見ても、いかに多岐にわたる議論と合意をめざしたものであるかがうかがえる。構成メンバーは総勢34名からなる。その内訳は、まず医療・看護等の職能団体代表が8名。医師会や歯科医師会、看護協会だけでなく、理学・作業療法士会といったリハビリ部門のほか、介護側から日本介護支援専門員(ケアマネジャー)協会の会長も名を連ねている。その他、事業者団体からは、病院協会や訪問看護事業協会に加え、在支診(在宅療養支援診療所)の連絡会や介護側では老健協会も入っている。さらには、研究機関や学会、住民・地方行政の代表など、およそ「在宅医療」にかかわる当事者が総結集したと言ってもいい。
  第1回会合では、まず「在宅医療推進のための基本的な考え方(案)」が提示された。それは、以下のような行政側の反省の弁で始まっている。@国民に対して、在宅医療が生活の質の向上に資する具体的な効果を必ずしも示すことはできてこなかった。A医療側にいまだに存在する、在宅医療に対する固定観念や不信感を払拭しきれていない、という具合である。つまり、在宅医療の現状が、「国民側にその価値を十分提示できていない」「医療側の意識改革が進んでいない」ことが厳然たる課題として存在し、その2点を払拭しない限り、地域包括ケアシステムが機能しないという行政側の危機感が現れているといえる。
● 在宅医療の現状と今後への期待
  ちなみに、在宅医療における医師側の提供サービスとしては「訪問診療」と「往診」があげられる。平成20年から26年までの7年間のレセプト件数を見ると、後者の「往診」はほとんど変わっていないが、計画的な訪問となる「訪問診療」は2.4倍と急増している。
  一方で、入院中の患者の希望を見ると、「完治するまでこの病院で入院していたい」という回答が5割に達しているのに対し、「自宅で訪問診療を受けて療養したい」という回答はわずか3.4%にすぎない。レセプト件数の伸びと患者側の希望に大きな乖離が生まれていることになる。その溝を生み出しているのが、先に述べた「生活の質の向上」という価値に医療がつながっていない点なのかもしれない。
  ちなみに、入院患者のうち、「自宅で療養できない」と回答した人に対して「何が実現できれば自宅療養が可能となるか」を質問した調査がある。それによれば、「入浴や食事などの介護が受けられるサービス」が4割に達し、次いで「家族の協力」(35.4%)となっている。これに対し、「医師、看護師などの定期的な訪問」は2割台にとどまる。ここでも「生活の質」をもたらしている介護サービスや家族支援に、医療が結びついていない現状が現れている。このあたりの解決の道筋が今後の議論で明らかになるのかどうか。平成30年度の診療報酬・介護報酬の同時改定への反映も含め、同会議における議論の行方が注目される。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、『2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート』『認知症ケアができる人材の育て方』(以上、ぱる出版)、『現場で使える新人ケアマネ便利帖』(翔泳社)など多数。
  
2016.07.28
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