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金融広報中央委員会による「金融リテラシー調査」の結果は
  金融に関する啓蒙活動を行っている金融広報中央委員会は6月17日、「金融リテラシー調査」の結果を公表しました。この調査は、人口構成とほぼ同一の割合で抽出した18〜79歳の25,000人を対象に、個人の金融リテラシー(お金の知識・判断力)の現状を把握するために今年2〜3月に実施されたものです。
  「家計管理」「生活設計」「金融知識・金融商品の利用選択」「外部知見の活用」などについて、@金融知識・判断力(正誤問題)とA行動特性・考え方等を問う設問から構成され、様々な切り口(セグメント)で分析されています。
● 金融知識・判断力(正誤問題の正答率)は年齢が上がるとともに高くなる傾向
  金融知識等を問う質問の正答率(全体平均55.6%)は、18〜29歳の年齢層が42.9%と最も低く、30代(51.1%)、40代(54.5%)、…と徐々に高くなっています(70代で若干低下)。このほかにも、学生(41.3%)、会社員(55.9%)、公務員(65.2%)などの職業別、収入なし(37.4%)から1500万円以上(66.3%)までの年収別、資産なし(41.5%)から2000万円以上(73.5%)までの金融資産の金額別などの属性別分析も行われています。
● 生命保険加入者の金融リテラシーは高め
  保険に関しては、知識を問う質問が3問と、行動特性として、加入時に他の商品と比較したかどうかを問う質問が含まれています。いずれも金融リテラシーが高いグループほど、保険に関しても正答率が高く、望ましい金融行動をとる割合も高くなっています。
  また、「18〜79歳の生保加入者」のセグメントを見ると、正誤問題の正答率が58.9%と平均より高く、家計管理や生活設計などでも望ましい行動をとる傾向が見られます。
● 奈良県、香川県、京都府などの金融リテラシーは高め
  県別の調査結果も公表されています。正誤問題の正答率は、奈良県が60.5%、香川県が59.4%、京都府が58.2%と上位3位を占めています。
  行動特性でみると、正答率の高い県は、緊急時に備えた資金を確保している人の割合が相対的に高く、正答率の低い県は、金融トラブル経験者の割合が相対的に高いといった傾向が見られるようです。
● 諸外国と比べると低いリテラシー
  共通の正誤問題について比較すると、日本の正答率は米国より10%低く、設問別、性別、年齢層別、年収別のどの区分でも下回っています。正答率には反映されない項目ですが、金融知識に自信がある人(平均よりも良いという自己評価)の割合が、日本では13%であるのに対して、米国では73%と大きな差がついています。
  また、ドイツや英国と比べても、正答率は7〜9%低いという結果になっています。
● 正答率が高い人の行動・考え方をまとめると
  @金融・経済情報をみる頻度が高い、A家計管理がしっかりしている、B金融商品購入時に、他の商品との比較、ウェブサイトでの調査、金融機関等への相談を行い、商品性を理解したうえで購入している、C損失回避傾向や横並び意識は低め、D資金計画をたてている、E緊急時の資金的備えを持っている。その結果、@金融トラブルに遭いにくい、A消費者ローンの利用が少なめ、B借入れの負担感が低め、C経済的ショックへの耐性が強め、という状況になっています。
  調査では、「金融教育を行うべき」との意見が全体の62.4%にのぼる一方、その中で実際に金融教育を受けたと回答した人は8.3%にとどまっています。また、「金融教育を受けた」と回答した学生の正答率(56.4%)は、受けていない学生(38.2%)より高く、全体平均をも上回っています。
  これらの結果を受けて同委員会では、社会に出る前に、また、社会人に対しても、ファミリー層、高齢者などライフステージごとに、各層のニーズにより適合した情報や学習機会がより広く提供されることが望ましい、としています。
参照  : 金融広報中央委員会(知るぽると)「金融リテラシー調査2016年調査結果」
  
松木 千賀子(まつき・ちかこ)
FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
静岡県出身。外資系石油会社の企画分析部門にて主にアナリストとして従事した後、個人のライフプランニングに興味を持ちCFP資格を取得。2003年よりFPアソシエイツ&コンサルティング株式会社にて、多くのリタイアメント層の顧客の担当として、投資信託の分析やポートフォリオ作成を行う。また、マネー誌やメルマガなどへの寄稿、金融機関社員向け研修や確定拠出年金制度導入企業の社員向け説明会の講師等の活動にも携わる。
  
2016.08.01
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