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欠損金の繰越控除
  会社の決算が赤字になってしまったときには、「欠損金の繰越控除」といって、赤字になってしまった事業年度の翌事業年度から9年間※1、赤字の繰り越しが認められています(ただし、青色申告法人に限ります)。また、過年度の欠損金は最も古い事業年度において生じたものから繰越控除します(2008年4月1日以後に開始した事業年度が対象)。
※1 2018年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金金額の繰越期間は10年間
<例>
事業年度 所 得 欠損金控除後の所得
(申告所得)
欠損金控除額の残額
2013年度 △5,000万円(赤字)
2014年度 500万円(黒字) 0 4,500万円
2015年度 700万円(黒字) 0 3,800万円
2016年度 600万円(黒字) 0 3,200万円
2017年度 600万円(黒字) 0 2,600万円
2018年度 500万円(黒字) 0 2,100万円
2019年度 300万円(黒字) 0 1,800万円
2020年度 600万円(黒字) 0 1,200万円
2021年度 500万円(黒字) 0 700万円
2022年度 500万円(黒字) 0 200万円
(切捨て)
  このように、青色申告法人であれば、赤字を繰り越すことにより、黒字の事業年度の申告所得がゼロになり、法人税の納税が発生しなくなります(ただし、法人住民税の均等割があるため、納める税金がゼロというわけではありません)。9年間繰り越しても控除しきれないときは、残った欠損金額は切り捨てられます(上記参照)。
大企業に相当する法人について、事業年度の欠損金等の控除限度額は、2012年4月1日から2015年3月31日までの間に開始する事業年度において、繰越控除をする事業年度の控除前所得金額の80%相当額、2015年4月1日から2016年3月31日までに開始する事業年度においては65%相当額、2016年4月1日から2017年3月31日までに開始する事業年度においては60%相当額、2017年4月1日から2018年3月31日までに開始する事業年度においては55%相当額、2018年4月1日以降に開始する事業年度においては50%相当額となります。
なお、産業競争力強化法の改正によって創設される事業適応計画の認定を受けた青色申告書を提出する法人がその適応計画を実施する場合、2020年4月1日から2021年4月1日までの期間内の日を含む事業年度(一定の場合には、2020年2月1日から3月31日までの間に終了する事業年度およびその翌事業年度)において発生した欠損金について、特例により、最大5事業年度の間で、控除上限を投資の実行金額の範囲内にして最大100%の控除が認められます。
  なお、欠損金の繰越控除を受けるためには次の2つの要件をみたす必要があります。
1.欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出していること
2.その後連続して確定申告書(白色でも可)を提出していること
  また、欠損金等が生じた事業年度に係る帳簿書類の保管が必要です。
■欠損金の繰越控除の制限、譲渡等損失の損金不算入
  欠損法人が次の要件に該当する場合には、その該当する日の属する事業年度前において生じた欠損金額について、欠損金の繰越控除制度を適用することができず、その事業年度開始の日から3年以内(その保有された日から5年を限度)に生ずる資産の譲渡損失は損金の額に算入することはできません。
  1. 欠損法人が、特定の株主等によってその発行済株式の総数の50%を超える数の株式を直接または間接に保有されたこと
  2. 上記1.の株式の保有された日から5年以内に、従前から営む事業を廃止し、かつ、その事業規模を大幅に超える事業を開始したこと
  3. その他一定の事由に該当したこと
2023.05.01
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