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申告と納税
T.源泉徴収による納税
1.源泉徴収制度とは
  所得税は、毎年1月1日から12月31日までの間に帰属する所得を合計して、その翌年の2月16日から3月15日までの間に、確定申告を行って納付することが原則となっています。しかし一定の所得については、支払いの際にその支払者が所得税を差し引いて、翌月10日までに納める方法がとられています。これが源泉徴収制度です。

  なお、この源泉徴収された税額は、源泉分離課税により課税関係が完結するものと、確定申告するときに納めるべき税額から控除されるものとがあります。
2.源泉徴収の対象となる所得
(1) 利子所得や配当所得に対する源泉徴収等
  銀行の利子は源泉徴収等で納税が完結します。他方、上場株式の配当金は特定口座において、20.315%により源泉徴収等されるが、納税者の判断により、確定申告不要、申告分離課税、総合課税を選択することができます。金融商品の別により、納税者が有利となる課税方法を選ぶこともできます。
(2) 給与所得に対する源泉徴収
  給与などの支払いの都度、給与所得の源泉徴収税額表により所得税が源泉徴収されます。これはあくまでも予定計算であり、その年の最終の給与等の支払いを受けるときに、その年間の給与等の総額に対する税額と毎月源泉徴収された源泉徴収税額との過不足を精算します。これを「年末調整」といいます。この年末調整によって、税金を納めすぎている者には還付され、不足している者は追加して税金を徴収されることになります。この結果、年末調整を受けた納税者の大多数は、納税関係が完結し確定申告は不要となります。
(3) 退職所得に対する源泉徴収
  次のように源泉徴収が行われます。
  • 支払いを受ける者が、「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合

    退職金等の支払者が退職所得の金額に応じた所得税等の額を源泉徴収するため、確定申告は必要ありません。ただし、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。

  • 支払いを受ける者が、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合

    支払金額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算
U.申告と納税
1.予定納税
(1) 予定納税とは
  所得税は、確定申告によって1年間に得たすべての所得を計算し、その所得額に対する税額を自ら計算して納付する申告納税制度をとっています。しかし、税金を一時に納付することは納税者にとっても負担であり、また国としても歳入の平準化を図ることが好ましいため、源泉徴収制度とともに予定納税制度を採用し、税金の一部をあらかじめ分納することにしています。
(2) 予定納税額と納期
  納税者は、予定納税基準額が15万円以上である場合には、次の第1期および第2期においてそれぞれ予定納税基準額の3分の1を納付しなければなりません。
  • 第1期の納期:7月1日から7月31日まで
  • 第2期の納期:11月1日から11月30日まで
  また、税務署長は、その年の5月15日の現況により計算した予定納税基準額および納付すべき予定納税額を、その年の6月15日までに、予定納税額を納付すべき納税義務者に、書面により通知しなければなりません。
(3) 予定納税基準額
  原則として、本年5月15日現在で確定している前年分の申告納税額がそのまま予定納税基準額となります。
2.確定申告
(1) 確定申告とは
  納税者は毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得とそれに対する税額とを自ら計算して、原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に申告するとともに、その納めるべき税額を納付しなければなりません。これを「確定申告」といいます。
  また、予定納税額、源泉徴収により納付した税額を精算するという役割もあります。
(2) 確定申告書の提出期限
  翌年の2月16日から3月15日までの間に所轄税務署長に提出しなければなりません。
(3) 確定申告をしなければならない者
一般の者
  利子所得、配当所得、事業所得、不動産所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、山林所得または退職所得のある者で、これらの所得金額が所得控除の合計額を超える者です。ただし、配当所得のある者で配当控除額が、その超える額に対する税額よりも多いときには確定申告は不要です。
給与所得のある者
  • 年中の給与等の収入金額が、2,000万円を超える者

  • 1カ所から給与などを受けている者で、給与所得および退職所得以外の所得(各種所得のうち、源泉分離課税のものを除く)の合計額が20万円を超える者。2カ所以上から給与等を受けている者で、主たる給与等の支払者以外から受ける給与収入金額と給与所得および退職所得以外の所得(各種所得のうち、源泉分離課税のものを除く)の合計額が20万円を超える者

  • 同族会社の役員等で、その法人から給与所得のほかに貸付金に対する利子や不動産の賃貸料を受けている者

  • 災害によって住宅または家財に被害を受けたため、災害減免法の適用を受けて、給与所得の源泉徴収の猶予を受け、または徴収された税金の還付を受けた者
退職所得のある者
  退職所得は、原則として源泉徴収で納税が完結するが、退職金の支払いを受けるときに「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったため、20.42%の税率で源泉徴収された者で、その税額が正規の方法で計算した税額より少ないとき
(4) 確定申告をすれば税金の戻る者
@給与所得者
 雑損控除、医療費控除、寄附金控除、住宅借入金等特別控除(年末調整で控除を受けている場合を除く)などの適用を受ける場合
A所得が公的年金等に係る雑所得のみの方
 生命保険料控除、地震保険料控除、雑損控除、医療費控除、寄附金控除など適用を受ける場合
B年の中途で退職した後、再就職しなかった方
 給与所得について年末調整を受けていない場合
C総合課税の配当所得や原稿料などがある方
 年間の所得が一定額以下である場合
D退職所得がある方
  • 退職所得を除く各種の所得の合計額から所得控除を差し引くと赤字になる
  • 退職所得の支払を受けるときに「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかったため、20.42%の税率で源泉徴収され、その所得税等の源泉徴収税額が退職所得について再計算した税額を超えている
3.更正と決定
  納税者が提出した確定申告書に記載されている所得金額などに誤りがあるときで、納税者が修正申告をしないときは、税務署は調査によって所得金額や税額などを更正して納税者に通知します。
  また、確定申告をしなければならない者が確定申告をしなかったときは、所得金額や税額などを決定して納税者に通知します。
4.所得税の延納
  所得税の納期限は、申告期限と同じ3月15日ですが、期限までにその全額を納付することができない場合には、確定申告で納付することになった税額の2分の1以上を3月15日までに納付すれば、残額については5月31日までの延納が認められます。
  なお、延納が認められた税額については3月16日から完納するまでの間、所定の割合で利子税がかかります。
5.青色申告制度
(1) 青色申告制度とは
  所得税では申告納税制度を採用していますが、自主的な正しい申告のできる納税者を1人でも多く育成するために、法律で定める帳簿を備え、日々の取引を正確に記録し、その帳簿に基づいて正確に所得と税額の計算ができる納税者には、所得の計算に際し特別の軽減を与えたり、または申告や納税の手続きの上でも、特に有利な取り扱いをすることによって優遇しています。
  このような納税者が提出する納税申告書は、青色の申告書によることとし、一般の申告書と区別しています。これが「青色申告」といわれる制度です。青色申告を選択できる者は、不動産所得、事業所得、山林所得を生ずべき業務を営んでいる者です。
(2) 青色申告の承認と申請
  青色申告の承認は納税者自身に与えられ、納税者は、事業所得を青色申告、不動産所得を白色申告というようなことはできません。
  青色申告をしようとするときは、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。ただし、その年の1月16日以後、新たに事業を開始したときは、その開始の日から2カ月以内に承認申請をすればよいことになっています。
(3) 青色申告者が備える帳簿
  青色申告をする者は、必要となる帳簿を備え付けて、日々の取引を正確に記録し、かつその帳簿を保存しなければなりません。
(4) 青色申告の特典
  • 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
    65万円の青色申告特別控除を受けるには、取引を複式簿記により記帳し、期日内に確定申告書を提出するほか、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行う必要があります
  • 青色事業専従者給与を必要経費にできる
  • 純損失の3年間の繰越しと繰戻しができる
  • 貸倒引当金を計上できる
  • 少額減価償却資産の特例を使える
2025.05.01
常國
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