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贈与税とは
1. 贈与税とは
    個人から財産を無償でもらう場合を考えてみると、「相続」「遺贈」「贈与」の三つが考えられます。人が死亡すると相続が開始し、相続や遺贈によって財産をもらった人には相続税が課税されます。
  ところで、その人が生存している間に、将来、相続人になる人や遺贈しようとする人に財産を贈与してしまえば、その贈与者が死亡したときには、相続税がかからなかったり、かかっても少ない負担で済みます。
  そこで、相続や遺贈によってもらった財産に対して相続税を課税し、一方では、生存中に贈与された財産に対しては、贈与税を課税することにしているのです。このような意味で、贈与税は、相続税の補完税であるといわれています。
2. 課税財産
    贈与税がかかる財産は、本来の贈与によりもらったすべての財産ですが、非課税財産は除かれます。
  ここでいう財産とは、金銭に見積もることができる経済的価値があるすべてのものをいいます。したがって、財産には、土地、家屋、株式などのほかに、物権、債権、無体財産権、信託受益権、電話加入権なども含まれます。また、法律上の根拠がなくても経済的価値が認められているもの、例えば、営業権のようなものも含まれます。しかし、質権・抵当権のような従たる権利は、主たる権利を担保するもので、独立した財産とは認められないので含まれません。
3. みなし贈与財産
    本来の贈与でなくても、実質的に贈与を受けたのと同様の経済的効果を生ずる場合については、その経済的利益の享受などを、贈与により取得したものとみなして贈与税を課税することにしています。
  (1)
他人が保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合
 
  生命保険契約または損害保険契約について、保険事故が発生した場合に、その保険料の負担者以外の者が受け取った保険金は、贈与により取得したものとみなされます(相続または遺贈により取得したものとみなされる場合を除きます)。これには、「満期保険金を受け取った場合」と「死亡保険金を受け取った場合」とがあります。
  生命保険契約の保険事故には、傷害や疾病などの保険事故で死亡を伴わないものは除かれます。また、損害保険契約の保険事故とは、偶然な事故に基因する保険事故で死亡を伴うものに限ります。
  保険料の一部を保険金受取人以外の者が負担していた場合には、次の算式により計算した金額が、贈与によって取得したものとみなされます。
 
受け取った保険金の額 × 保険金受取人以外の者が負担した保険料の額
保険事故発生時までに払い込まれた保険料の全額
  (2)
他人が掛け金を負担していた定期金を受け取った場合
 
  郵便年金契約、その他の定期金給付契約の給付事由が発生した場合に、その契約の掛け金を定期金受取人以外の者が負担していたときには、定期金の受取人は、その給付事由の発生のときに、その定期金の支給を受ける権利を、掛け金を負担した者から贈与によって取得したものとみなされます。掛け金の一部を定期金受取人以外の者が負担していた場合には、次の算式により、計算した金額が贈与によって取得したものとみなされます。
 
定期金に関する権利の価額 × 定期金受取人以外の者が負担した掛け金の額
給付事由発生時までに払い込まれた掛け金の全額
  (3)
信託契約により委託者以外の者が受益者となった場合
 
  財産を信託するときには、信託契約により委託者が受益者(その信託から生ずる利益を受ける者)を指定することになっているが、この受益者が委託者以外の者であるときは、その信託行為があったときに、受益者がその信託受益権(その信託の利益を受ける権利)をその委託者から贈与によってもらったものとみなされます。
 
  (4)
著しく低い対価で財産を譲り受けた場合(低額譲渡)
 
  著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には、その対価とその財産の譲渡のときにおける時価(相続税評価額)との差額に相当する金額が、その財産を譲渡した者から贈与を受けたものとみなされます。
 
  (5)
債務免除等により利益を受けた場合
 
  債務者が債権者から債務免除を受けたり、第三者に債務を引き受けてもらったり、または弁済してもらった場合、その債務免除等による利益を受けた者が、その債務免除等に係る債務の金額に相当する金額が、その債務を免除・引き受け、または弁済してくれた者から贈与により取得したものとみなされます。
 
4. 非課税財産
  (1)
法人からの贈与財産
 
  贈与税は、個人から個人への贈与に限り課税されます。法人からの贈与財産に対しては、贈与税ではなく、一時所得として所得税・住民税が課税されます。
 
  (2)
扶養義務者相互間の生活費等
 
  夫婦・親子・兄弟姉妹などの扶養義務者相互間で、生活費や教育費に充てるために財産の贈与があった場合には、課税しないことになっています。この生活費とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用をいい、治療費や養育費なども含まれます。なお、教育費は、被扶養者の教育上、通常必要と認められる学費、教材費、文具費などをいいますが、義務教育費に限りません。
 
  (3)
公益事業用の受贈財産
 
  宗教・慈善・学術、その他公益事業を行う者が、贈与により取得した財産で、その公益事業の用に供されることが確実なものについては、課税されません。
 
  (4)
心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
 
  地方公共団体の条例に基づき取得した心身障害者のための給付金を受ける権利は、課税されません。
 
  (5)
選挙の候補者が受けた財産
 
  公職選挙法の選挙の候補者が、選挙運動に関し、贈与を受けた金銭・物品等で選挙管理委員会に報告されたものについては、課税されません。
 
  (6)
相続開始の年に被相続人から贈与を受けた財産
 
  相続、または遺贈により財産を取得した者が、相続開始の年においてその相続の被相続人から贈与を受けた財産は、課税されません。この贈与財産の価額は、相続税の課税価格に算入されます。
 
  (7)
特別障害者扶養信託契約に基づく信託受益権
 
  特別障害者を受益者とする特別障害者扶養信託契約に基づいて、特別障害者が有することとなる信託受益権のうち6,000万円までは課税されません。
 
2023.05.01
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