>  平成30年度税制改正速報! >  二.資産課税 1.事業承継税制の特例の創設等
二.資産課税
1.事業承継税制の特例の創設等
■  非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度の創設  
  非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度を次のとおり創設する。
@ 特例後継者(仮称)が、特例認定承継会社(仮称)の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈(以下1において「贈与等」)によりその特例認定承継会社の非上場株式を取得した場合には、その取得した全ての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡の日等までその納税を猶予する。
(注1) 上記の「特例後継者」とは、特例認定承継会社の特例承継計画(仮称)に記載されたその特例認定承継会社の代表権を有する後継者(同族関係者と合わせてその特例認定承継会社の総議決権数の過半数を有する者に限る)であって、その同族関係者のうち、その特例認定承継会社の議決権を最も多く有する者(その特例承継計画に記載されたその後継者が2名又は3名以上の場合には、その議決権数において、それぞれ上位2名又は3名の者(その総議決権数の10%以上を有する者に限る))をいう。
(注2) 上記の「特例認定承継会社」とは、平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承継計画を都道府県に提出した会社であって、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第12条第1項の認定を受けたものをいう。
(注3) 上記の「特例承継計画」とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた特例認定承継会社が作成した計画であって、その特例認定承継会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたものをいう。
A 特例後継者が特例認定承継会社の代表者以外の者から贈与等により取得する特例認定承継会社の非上場株式についても、特例承継期間(仮称)(5年)内にその贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、本特例の対象とする。
B 現行の事業承継税制における雇用確保要件を満たさない場合であっても、納税猶予の期限は確定しない。ただし、この場合には、その満たせない理由を記載した書類(認定経営革新等支援機関の意見が記載されているものに限る)を都道府県に提出しなければならない。なお、その理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合には、特例認定承継会社は、認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けて、その書類にその内容を記載しなければならない。
C 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特例承継期間経過後に、特例認定承継会社の非上場株式の譲渡をするとき、特例認定承継会社が合併により消滅するとき、特例認定承継会社が解散をするとき等には、次のとおり納税猶予税額を免除する。
特例認定承継会社に係る非上場株式の譲渡若しくは合併の対価の額(その譲渡又は合併の時の相続税評価額の50%に相当する額を下限とする)又は解散の時における特例認定承継会社の非上場株式の相続税評価額を基に再計算した贈与税額等と譲渡等の前5年間に特例後継者及びその同族関係者に対して支払われた配当及び過大役員給与等に相当する額(以下「直前配当等の額)との合計額(合併の対価として交付された吸収合併存続会社等の株式の価額に対応する贈与税額等を除いた額とし、当初の納税猶予税額を上限とする)を納付することとし、その再計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額が当初の納税猶予税額を下回る場合には、その差額を免除する。
特例認定承継会社の非上場株式の譲渡をする場合又は特例認定承継会社が合併により消滅する場合(その譲渡又は合併の対価の額がその譲渡又は合併の時の相続税評価額の50%に相当する額を下回る場合に限る)において、下記ハの適用を受けようとするときには、上記イの再計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額については、担保の提供を条件に、上記イにかかわらず、その納税を猶予する。
上記ロの場合において、上記ロの譲渡又は合併後2年を経過する日において、譲渡後の特例認定承継会社又は吸収合併存続会社等の事業が継続しており、かつ、これらの会社において特例認定承継会社の譲渡又は合併時の従業員の半数以上の者が雇用されているときには、実際の譲渡又は合併の対価の額を基に再々計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額(合併の対価として交付された吸収合併存続会社等の株式の価額に対応する贈与税額等を除く)を納付することとし、その再々計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額が上記ロにより納税が猶予されている額を下回る場合には、その差額を免除する。
(注4) 上記の「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」とは、次のいずれか(特例認定承継会社が解散をした場合にあっては、ホを除く)に該当する場合をいう。
直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社が赤字である場合
直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社の売上高が、その年の前年の売上高に比して減少している場合
直前の事業年度終了の日における特例認定承継会社の有利子負債の額が、その日の属する事業年度の売上高の6月分に相当する額以上である場合
特例認定承継会社の事業が属する業種に係る上場会社の株価(直前の事業年度終了の日以前1年間の平均)が、その前年1年間の平均より下落している場合
特例後継者が特例認定承継会社における経営を継続しない特段の理由があるとき
ただし、特例認定承継会社の非上場株式の譲渡等が直前の事業年度終了の日から6月以内に行われたときは上記イからハまでについて、その譲渡等が同日後1年以内に行われたときは上記ニについて、それぞれ「直前の事業年度終了の日」を「直前の事業年度終了の日の1年前の日」とした場合にそれぞれに該当するときについても、「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」に該当するものとする。
D 特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者(その年1月1日において20歳以上である者に限る)であり、かつ、その贈与者が同日において60歳以上の者である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができることとする。
E その他の要件等は、現行の事業承継税制と同様とする。
(注) 上記「1.事業承継税制の特例の創設等」の改正は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用する。
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