日本経済は「100年に一度の大不況」となり、消費は伸び悩み、企業の倒産やリストラなど、悪循環に陥っている。
マスコミは連日のごとく「危ない会社」や「生保は損」など刺激的な見出しで報道を繰り広げ、それがまた不安をあおり立てている。
平成次郎が勤務しているB生命は、中堅規模だが堅実な経営で知られ、格付け評価でも目下のところは問題ない。しかし、厳しい状況にあることは確かで、販売面はここ数年低落傾向にあり、それ以上に深刻なのは解約や失効などが激増していることである。当然のことながら、営業職員の平均年収も2〜3割ダウンし、脱落する人も増えてくる。
会社も従来の保険募集では限界にきているとの認識を抱き、より高度な専門知識の習得や提案型セールスの展開など、何とか現状を打開しようとしているが、まだ全社的に効果が表れているとは言い難い。
このような厳しい環境下にあっても、次郎の機関では平常月の2.5倍近い必達基準が与えられている。先輩機関長たちはどうやら最初から基準達成は無理だとあきらめている様子だが、次郎は初めて体験するだけに恐さ知らずである。こういう時代だからこそ、売って、売って、売りまくってやると意気軒高で進発に臨んだ。
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