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機関経営12ヶ月
「売れない時代に売りまくる」(その1)
生保営業(募集編)
初体験の大募集月
  日本経済は「100年に一度の大不況」となり、消費は伸び悩み、企業の倒産やリストラなど、悪循環に陥っている。
  マスコミは連日のごとく「危ない会社」や「生保は損」など刺激的な見出しで報道を繰り広げ、それがまた不安をあおり立てている。
  平成次郎が勤務しているB生命は、中堅規模だが堅実な経営で知られ、格付け評価でも目下のところは問題ない。しかし、厳しい状況にあることは確かで、販売面はここ数年低落傾向にあり、それ以上に深刻なのは解約や失効などが激増していることである。当然のことながら、営業職員の平均年収も2〜3割ダウンし、脱落する人も増えてくる。
  会社も従来の保険募集では限界にきているとの認識を抱き、より高度な専門知識の習得や提案型セールスの展開など、何とか現状を打開しようとしているが、まだ全社的に効果が表れているとは言い難い。
  このような厳しい環境下にあっても、次郎の機関では平常月の2.5倍近い必達基準が与えられている。先輩機関長たちはどうやら最初から基準達成は無理だとあきらめている様子だが、次郎は初めて体験するだけに恐さ知らずである。こういう時代だからこそ、売って、売って、売りまくってやると意気軒高で進発に臨んだ。
やる気と能力
  従来、成果(成約)はやる気と能力の掛け合わせだといわれていた。特にセールスの世界ではモチベーションのあり方が最重要視され、確かに意欲さえあれば通用した時代もあった。大募集月などはその最たるもので、決起大会や朝礼でも具体的な販売戦略や商品研究より、笛や太鼓のお祭り騒ぎでムードを盛り上げ、やる気に火を付けようとしていたらしい。だが、今はやる気だけでは通用しない。問題の所在を冷静に見抜く観察力と洞察力が求められている。しかし、そんな職員はまれで、やる気を起こさせることも難しそうな職員たちを統率し、闘っていかなければならない。
  懸念されたブロックの後援会も何とか無事終了し、ダイレクトメールの発送や重要顧客のあいさつ回りなど、考えられる準備もすべて整えた。あとは基準達成に向けてまい進するのみである。
  Y機関では毎週金曜日の午後、組織長および機関内のスタッフ計6名に、次郎を座長とした「機関経営委員会」を実施している。いわば最高決議機関だが、当初はどちらかというと次郎の一方的な指示・伝達で終始していた。だが、これではいけないという反省から、今では極力自分の発言は控え、組織長たちの意見を聴くようにしている。今日も大募集月の基準達成のため、各組織の実行計画や見通しを中心に討議を重ねていたが、出される意見は暗いものばかりである。毎日毎日、断りの連続で悪戦苦闘している身では無理もないと次郎も心の底では思う。が、それを認めてしまっては「経営委員会」は単なる愚痴の言い合いの場になってしまう。まずは自らが今月に賭ける姿勢を見せるとともに、明確な方向性を示す必要がある。それが「やる気」と「能力」を引き出す源になると次郎は確信していた。
執筆当時と時代背景が異なっており、一部現在の状況にそぐわない記載等がありますが、機関経営の本質に変わることはありませんので、あえて原文通りとしています。
(つづく)
2009.07.06
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