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機関経営12ヶ月
「売れない時代に売りまくる」(その3)
生保営業(募集編)
第1三半期を終えて
  “光陰矢の如し”。1カ月ごとに締切りを迎える営業の場合は、特に時間が経つのを早く感じる。平成次郎の場合も、いつの間にか4回の締切りを経験した。本社で事務をしていたときの感覚が抜けきらず、唯我独尊的であったため、組織長や職員から支持が得られなかったこと、ひょんなことから将来有望な新人二人が入社し、機関内の雰囲気が一変したこと、初めての大募集月、必死に頑張ったが目標には遠く及ばず悔しい思いをしたこと、さまざまな出来事が脳裏を駆け巡る。
  4〜7月の第1三半期の業績は、新契約の増加保険金はマイナス17%、陣容面は大塚さん、永井さんの他に1名が入社したが2名が退社、他にも不安定な職員が2、3名おり、横ばいの状態である。最も深刻なのは、減少契約に一向に歯止めがかからず、増加保険金を累計で3億円近く上回っていることである。職員の収入も昨年度からほとんど減収となっており、賞与を手渡すときも気が重く、どう声を掛けていいのか戸惑うほどである。
  これから年度の中央、第2三半期を迎えるが、このままでは同じ結果に終わるのが目に見えている。それどころか、虎の子の新人たちも思うように成果が上がらないので、いつどうなるか分からない。まして、迎えた8月は、夏休みもあり年間を通し最も難しい月といわれる。ここをどう乗り切るのか、第1三半期の業績を検討した結果、やはり販売力の向上しかないと次郎は判断した。
決断と行動
  どんな業界にも不況知らずの敏腕セールスマンやマネージャーがいる。もちろん、生保業界にも信じ難いほどの成果を上げ続け、話題となっている人がいる。それらの人の体験談や成功のポイントは、業界誌や会社からの情報提供などで次郎もよく知っている。だが、朝礼でいくら紹介しても、結局“他人事”“高嶺の花”なのか、真似事でもいいから実践してみよう、などと言い出す職員は一人もいない。もっとも次郎自身が、「そんなことを要求しても、うちの職員にはとても無理だ」と思い込んでいる向きがないでもない。
  「要は自分自身が販売について十分な知識を持たず、自信もないからだ」と次郎は思わざるを得ない。考えてみれば、募集の体験といえるのは見習い期間中にイニシャル訪問をしたぐらいで、機関長になってからも、職員の見込客に同行訪問し、あいさつする程度である。全くの無の状態から見込客を作り、契約に至るまでの苦労を本当に理解できているのか甚だ疑問である。聞きかじりの提案型募集や生涯設計の必要性をいくら唱えても、自分の体験に基づく信念ではないだけに、迫力も説得力もないのでは…。次郎は現状を次のように分析し、同時に「ここは俺自身が販売を体験し、顧客の声を聞くことから始めよう!」と決断した。
  以上を実行するため、原則として1週間、毎日14時〜15時半、夜は20時〜23時まで飛び込み訪問することにした。
  日中は商店街、夜は住宅街を中心に回り、初回訪問時には「お客様満足度アンケート」を使うことにし、準備を整えた。
執筆当時と時代背景が異なっており、一部現在の状況にそぐわない記載等がありますが、機関経営の本質に変わることはありませんので、あえて原文通りとしています。
(つづく)
2009.08.17
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