> 機関経営12カ月 > vol.14「日々新たに また日に新たに」(その2)
機関経営12ヶ月
「日々新たに また日に新たに」(その2)
生保営業(募集編)
ビジョンの再構築
  倉山社長から学んだ言葉、「まことに日に新たに、日々新たに、また日に新たなり」をかみしめながら、いま一度、機関の現状と問題を考えてみると、やはり次代を担う職員の養成が急務という点に行き着く。とりわけ、核となる組織長づくりがポイントと思われる。この点については着任時にも痛感したことだが、ふさわしい人材が見当たらずに断念した経緯がある。だが、いまは当時と状況が変わっている。永井さん、大塚さんという二人の有望な新人も定着し、三人の組織長も次郎に協力的になってきた。
  一方、販売を取り巻く環境は相変わらず厳しく、次郎自身が率先垂範をした経験をもとにいろいろと指導してはいるものの、いかんせん長年の習慣と年齢的なものがネックになり、現在の組織長では限界が感じられ、全体への波及は難しい。入社してくる新人も、若い人は組織長との年代的なギャップのためか、うまく育たない。
  新しい力、新しい波を巻き起こす、それを今やらねばならないし、そのチャンスでもある。そして、それは永井さん、大塚さんを組織長として育てあげられるかに懸かっていると次郎は熟考の末、結論を出した。
無限の可能性を引き出す
  人はみな無限の可能性を秘めている。それをいかに引き出すかが管理者の役割であるが、永井さん、大塚さんはリーダーとしての資質を十分持っていると次郎は確信している。問題は本人たちが納得し、その気になってくれるかである。また、現在の組織長への配慮もある。彼女たちを無視して事を進めては、一波乱あるかもしれない。
  そこで次郎は、三人の組織長と会合を持ち、自分の考えや方針を虚心に話してみることから着手した。一方的にこうしたいと伝えるより、まずは現状の機関をさらに発展させるためにはどうすべきか、組織長たちの考えを聞くことにした。
  その結果、意外なことに若手、それも永井さん、大塚さんを次期組織長にしたらどうかという意見で一致したのである。とりわけ彼女たちの親組織長は積極的で、早く自分は引退したいなどと余計なことまで言い出す始末である。こうなれば次郎も百人力を得たようなもので、本人たちへの説得には自分があたることを約束した。
  以前、田辺さんを組織長にしようとしてうまくいかなかったように、説得に自信があるわけではない。当たって砕ける気持ちで、永井さん、大塚さんと個別に話をしてみることにした。奮発して、人気のフランス料理店で、親組織長を同席させ食事をしながらの説得である。
  永井さんの場合は、組織長を目指すための前段階としてのリーダーを引き受けるよう、そのためにやるべきこと、それによるメリット、処遇などを説明し、了解を求めた。一方、大塚さんには理よりも情に訴え、同時にそのことが仕事にも大きくプラスになることを強調した。二人とも採用実績がまだないことを理由に自信がないと否定的であったが、次郎は一歩も引かず、ここが正念場と土下座をせんばかりに訴えた。組織長も一緒に応援してくれたせいもあり、一応考えさせてくれということでその日は終わったが、まず大丈夫と手応えを感じた。
  それから数日後、なんと永井さん、大塚さんの両名が、それぞれ採用候補者を機関に連れてきたのである。実は二人とも次郎の説得を受けてから本気になり、連日採用活動をして知人を誘うことに成功したものと分かったのだが、もし駄目だったら組織長の件は断るつもりだったと聞き、次郎も冷や汗を流した。
  こうして、新しい二人の組織長の卵、機関限りのリーダーが誕生した。できれば半年後には3名以上の所属員構成となり、正式な組織長として任命したいと次郎の思いは膨らんでいく。
  来月は二回目の大募集月を迎えるが、何となく今度はうまく乗り切れそうな予感を次郎は覚える。
「日々新たに…」
  新たな夢が次郎に活力を与え、それが機関の職員にも伝播し、活気が生まれてきたのは事実である。

執筆当時と時代背景が異なっており、一部現在の状況にそぐわない記載等がありますが、機関経営の本質に変わることはありませんので、あえて原文通りとしています。
(つづく)
2009.10.26
ページトップへ