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機関経営12ヶ月
「制覇『生命保険の月』」(その1)
生保営業(募集編)
二度目の大募集月
  このところ、またマスコミ等で生命保険の現状についてとりあげられるケースが増えている。生保危機をあおるようなニュースも少なくなく、業界に身を置くものの一人として次郎も無関心ではいられない。景気低迷がいつまで続くのかは分からないが、かつての成長は望むべくもなく、これが当たり前だという前提で対処していくしかない。
  迎えた11月は「生命保険の月」で「業界オリンピックの月」ともいわれ、昭和22年に創設された。当時は終戦直後の混乱の中、生保業界も未曾有の危機にさらされていた。
  生命保険会社に対する世間の信用は著しく低下しており、また経済事情の悪化は極端で、保険の募集どころではなかった。さらに、保険経営の根本でもある死差、利差、費差いずれも大きな赤字を覚悟せねばならなかった。なんとなく、昨今の状況と似ていないでもないが、こうした戦後の混乱とインフレのなかで混迷を極めていた生保事業を、一刻も早く復興させるための一大キャンペーンとして、当時のGHQ保険担当官ロイストンの示唆もあり「生命保険の月」がスタートしたのであった。一人でも多くの人に生命保険の必要性を訴えるために、新種保険の開発や月掛保険の創設を始め、営業力の強化として家庭婦人をセールスマンとして採用したのもこのころである。そうした努力の結果、生保も日本経済の奇跡的な復興と相伴い、躍進を続けてきた。
  過去の歴史をひもとき、戦後の混乱期における想像を絶する先人達の苦労を思うと、次郎もいまさらながら「生命保険の月」の意義と、それに取り組む決意を新たにせざるを得なかった。
GNPがなぜ悪い!
  マスコミで、保険募集人によるGNP(義理・人情・プレゼント)販売が紹介されている。要約すれば、義理・人情に縛られ訳も分からずに高額の保険に加入すべきではない、ということだが、あまりに一面的な考え方ではないだろうかと次郎は疑問を持つ。確かに、通信販売などで安く豊富な商品が提供されるのは結構なことだ。また、インターネットによる人を介さない販売は、余計な気配りも要らないというメリットもある。しかし、「対面販売」はもはや時代遅れで衰退の道を辿るだけなのだろうか?
  無形商品である生命保険は、洋服や化粧品と根本的に異なる。顧客に面談し、説得し、きめ細かなサービスをすることがどうしても必要だと次郎は思う。もちろん従来型のGNPでよしとするのではなく、これからは人と機械を上手に使い分ける必要があるだろう。8月に自らが体験した募集の実践により、確固たる信念でもあった。猛暑のなか何回も顧客のもとへ通った、その熱意によって契約にこぎつけたのではなかったか? 普段会わない人に会えるチャンスをつくり、「いかがですか?」という一押しが顧客の決断を生んだのではなかろうか? その人たちは、ネット販売で保険の申し込みは決してしなかったはずである。
  ただし、GNPのPは単なるプレゼントではなく、プレゼンテーション、つまり顧客にふさわしい提案をしたり、情報提供するものでなくてはならない。また、義理・人情とはよりよい人間関係づくりのことであり、そのためにFP知識や業際知識、あるいはマナー教育も重要である。
  半ば自信を失っている職員たちに、次郎は今日までそうした自分の考えに基づき、教え、導き、自ら実践してきた。「新GNP」を徹底的に推進することにより、契約を大量に獲得する、それが「生命保険の月」でもある、と次郎は全員に訴えたのである。

執筆当時と時代背景が異なっており、一部現在の状況にそぐわない記載等がありますが、機関経営の本質に変わることはありませんので、あえて原文通りとしています。
(つづく)
2009.11.09
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